ニキビと間違えやすい背中や頭皮の炎症――原因はマラセチア菌? 人にうつるのか、治療法などの疑問を解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

背中や頭皮に繰り返しできる赤いブツブツをニキビだと思ってケアしていませんか?なかなか治らない場合は、マラセチア菌が原因かもしれません。今回は、マラセチア菌について解説します。また、マラセチア菌を原因とする病気や治療法についても詳しく説明するため、ニキビのような赤いブツブツ、かゆみや炎症、フケなどが治らずに悩んでいる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

マラセチア菌はカビの一種

マラセチア菌とは、皮膚に常在するカビ(真菌)の一種で、健康な人の皮膚にも存在する常在菌です。通常は無害ですが、様々な要因で過剰に増殖すると、マラセチア毛包炎や癜風(でんぷう)、脂漏性皮膚炎などの原因になります。
マラセチア菌は皮脂を栄養源として増殖するため、皮脂分泌の多い頭皮、顔、胸、背中などに症状が現れます。また、高温多湿の環境を好むため、梅雨や夏場に症状が悪化しやすいことも特徴です。

マラセチア菌が増殖する原因

マラセチア菌は高温多湿の環境を好みますが、次のような要因が関わると、より増殖しやすくなります。

  • 過剰な皮脂分泌

    栄養源である皮脂が多いほど増殖しやすくなります。そのため、皮脂分泌の多い若者や男性は、マラセチア菌による皮膚疾患を発症しやすい傾向があります。
  • バリア機能の低下

    皮膚のバリア機能が低下すると、皮脂の分泌量が増え、マラセチア菌が増殖しやすくなります。
  • 免疫力の低下

    ストレスや睡眠不足、食生活の乱れなどは、免疫力を低下させ、マラセチア菌を増殖しやすくします。
  • ステロイド外用薬の長期間使用

    ステロイド外用薬は免疫機能を抑制するため、マラセチア菌が増殖しやすくなることがあります。

マラセチア菌が人から人へうつることはない

マラセチア菌は健康な人の皮膚にも存在しているため、人から人への感染が問題になることはありません。もともと自分の皮膚に存在するマラセチア菌が増殖してしまい、皮膚に様々な症状を引き起こすことがほとんどです。また、マラセチア菌は動物(哺乳類)にも存在していて、犬や猫などもマラセチア菌による皮膚炎を発症することがあります。しかし、ペットから人へ感染するケースはありません。

マラセチア菌が原因で起こりうる症状や病気

マラセチア菌が原因とされる主な病気の特徴を詳しく見ていきましょう。

〇マラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎は、毛穴にマラセチア菌が侵入し、炎症を起こすことで発症します。背中、肩、胸、二の腕などに赤いニキビのようなポツポツとした発疹が現れ、白い膿を持つこともあります。また、痒みを伴う人もいます。ニキビ(尋常性ざ瘡)と間違えやすいのが特徴で、かつては「夏季ざ瘡(かきざそう)」と呼ばれていましたが、異なる病気です。思春期以降に発症することが多く、特に皮脂の分泌が多い人に発生しやすい傾向があります。

〇癜風(でんぷう)

癜風は、胸、背中、腹部など、皮脂分泌の多い皮膚でマラセチア菌が過剰に増殖することにより発生します。代表的な症状は白色や褐色、赤色の斑点で、多発する場合もあります。斑点が「癜(なまず)」に似ていることがその名前の由来とも言われ、黒い斑点は「黒なまず」、白い斑点は「白なまず」と呼ばれています。
痒みはほとんどなく、冬場になると改善するため、放っておいてしまう人もいますが、癜風は再発しやすい病気です。そのままにしておくと、人によっては色素沈着や色素脱失(皮膚の色が抜けて白くなること)が起こったり、斑点どうしが融合して大きく目立つようになったりします。症状が悪化する前に受診して、適切な治療を受けることが重要です。

〇脂漏性皮膚炎

脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い頭皮や髪の生え際、耳の後ろ、顔、首、胸、背中、股間などに発生しやすい皮膚炎で、マラセチア菌が関係していると考えられています。黄色っぽいフケや、赤み、鱗屑(りんせつ:白くて細かいカサブタのようなもの)が主な症状で、痒みを伴うこともあります。
特に思春期以降に発生する成人型の脂漏性皮膚炎は慢性的で、継続的な治療が必要です。環境の変化による皮脂分泌の増加、不十分な入浴や洗顔、ホルモンやビタミン代謝の異常などが関係していると考えられています。

その他、マラセチア菌はアトピー性皮膚炎の悪化因子となる場合もあります。

マラセチア菌が原因で起こる皮膚疾患の治療法

マラセチア菌を原因とする皮膚疾患は、他の病気と見分けがつきにくいことがあります。そのため、症状などによっては確定診断をするために検査を行います。皮膚から採取した鱗屑などを顕微鏡で確認するKOH直接鏡検法や、紫外線ランプを当ててマセラチア菌を確認するウッド灯検査、皮膚から採取した検体を培養して行う培養検査などの検査方法があり、判別が難しい場合には、皮膚の小片を採取して皮膚生検を行うこともあります。
診察や検査の結果、マラセチア菌による疾患と診断された場合には、次のような治療を行います。

〇マラセチア毛包炎の治療

マラセチア毛包炎も、抗真菌薬の外用薬や内服薬で治療します。まずは外用薬が使用されますが、効果が不十分な場合は、内服薬が併用されることもあります。

〇癜風の治療

癜風の治療では、抗真菌作用のある外用薬を用います。症状が改善しない場合や広範囲にわたる場合は、内服薬を使用することもあります。また、抗菌作用のあるシャンプーやボディーソープも予防に役立ちます。

〇脂漏性皮膚炎の治療

成人の脂漏性皮膚炎は、ステロイド外用薬や抗真菌外用薬などによる治療が一般的です。また、症状などに合わせて抗ヒスタミン薬やビタミンB2・B6などの内服薬を併用することがあります。

マラセチア菌の増殖を防ぐために!日常生活におけるポイント

マラセチア菌を原因とする皮膚疾患は病院で治療することができますが、再発しやすいのが特徴です。そのため、治療によって症状が改善した場合でも、自己判断で薬を中断せず、医師の指示に従って続けることが重要です。
また、症状を改善・予防するためには、次の点にも注意しましょう。

〇皮膚を清潔に保つ

汗をかいたらこまめに拭き取ったり、シャワーを浴びたりして清潔な状態を保ちましょう。特に、頭皮、顔、胸、背中などはマラセチア菌が繁殖しやすい部位なので、丁寧に洗いましょう。

〇通気性の良い衣類を着用する

通気性の悪い衣類は、汗や皮脂が溜まりやすく、マラセチア菌が増殖しやすい環境を作ってしまいます。通気性の良い衣類を着用するようにしましょう。

〇生活習慣を見直す

バランスの良い食事や十分な睡眠を心がけましょう。食事においては、皮脂分泌を適正に保つ作用のあるビタミンB群を意識して摂ることがおすすめです。また、睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスを乱して皮脂の分泌量が増える原因になるため、注意しましょう。

ここまでマラセチア菌や、関連する病気について説明してきました。マラセチア菌による皮膚疾患の中には、ニキビなどと間違われるものもあります。セルフケアで様子を見てしまう人も多いのですが、改善しない場合には早めに皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • マラセチア菌は皮膚に常在するカビの一種で、皮脂が多い場所や高温多湿な環境で増殖しやすい
  • マラセチア菌が関与する疾患には、マラセチア毛包炎、癜風、脂漏性皮膚炎などがある
  • マラセチア菌による皮膚疾患の原因として、人から人への感染が問題になることはない
  • 治療には抗真菌作用のある外用薬・内服薬が用いられ、改善には適切な診断と継続的なケアが重要
  • 皮膚を清潔に保つ、通気性の良い衣類を着る、生活習慣を整えることが予防に効果的