頭皮や顔に現れる脂漏性皮膚炎とは?症状や原因、治し方を解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

原因不明のフケや顔の赤みなどに悩んでいませんか?もしかすると、それは脂漏性皮膚炎かもしれません。では、脂漏性皮膚炎とはどのような病気なのでしょうか。症状や原因、治療法について詳しく解説します。

脂漏性皮膚炎について

脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌の多い部位に、フケや赤み、鱗屑(りんせつ:白くて細かいカサブタのようなもの)などが見られる皮膚疾患です。脂漏性皮膚炎は、乳児型と成人型とがあり、現れやすい場所や症状、経過などが次のように異なります。

〇乳児型

生後2~4週間頃に発生します。頭部や額、眉毛の周辺に黄色っぽいカサブタのようなものができたり、湿疹やかさつきが見られたりします。生まれたばかりの赤ちゃんにこのような症状ができると心配になりますが、比較的よく見られる症状で、胎児期に母体からもらう女性ホルモンの影響で起こります。症状は一過性で、スキンケアを正しく行うことで、生後8~12ヶ月頃までに自然に消えていきます。

〇成人型

成人型の脂漏性皮膚炎は、思春期以降から40歳ぐらいまでに多く発生します。性別では皮脂分泌量の多い男性によく見られます。
皮脂の多い頭皮や髪の生え際、耳の後ろ、眉間や眉毛、鼻の周り、首周り、わきの下、胸、足のつけ根、股間などに、フケ、赤み、鱗屑などの症状が現れます。痒みを伴う場合もありますが、全く感じない人もいます。

成人型の脂漏性皮膚炎は慢性的で、乳児型のように自然に治ることは期待できません。再発もしやすいため、皮膚科で根気よく治療を続ける必要があります。

脂漏性皮膚炎の原因

成人型の脂漏性皮膚炎の発生には、皮膚に棲みつくマラセチア菌が関係していると言われています。マラセチア菌はカビの一種で、健康な人の皮膚に存在する常在菌の仲間です。マラセチア菌は皮脂を分解する働きがあり、皮膚の健康を保つためには必要な菌です。ところが、何らかの理由で皮脂が増えてしまうと、マラセチア菌が増殖し、皮脂に含まれる「トリグリセリド」を分解して「遊離脂肪酸」を多く発生させます。この遊離脂肪酸が皮膚に刺激を与え、フケや赤みなどの症状を引き起こします。

以上が脂漏性皮膚炎のメカニズムですが、根本的な原因まではよくわかっていません。現時点では、次のような要因が影響するのではないか、と言われています。

  • 皮脂の成分や分泌量の変化
  • 入浴や洗顔が不十分なこと
  • 生活習慣の乱れ(寝不足、ストレス過多、偏った食生活)
  • ホルモン異常
  • ビタミン代謝(ビタミンB2やB6など)の異常
  • 他の病気との合併(パーキンソン病やAIDSなど)

このように、脂漏性皮膚炎は日常生活も影響していると考えられていることから、改善には皮膚科での治療と生活習慣の見直しの両方が必要です。

脂漏性皮膚炎の治し方:皮膚科での継続的な治療が重要

お伝えしたように、成人型の脂漏性皮膚炎が自然に治ることはなく、改善するには皮膚科での治療が必要です。皮膚科の治療では、おもにステロイドの外用薬と抗真菌外用薬を使います。

  • ステロイド外用薬:炎症を抑える働きがあります。作用が穏やかなものから強いものまであるため、症状や部位に合わせて使い分けることができます。また、クリームやローションなど剤形のタイプも豊富で、毛の生えている部位はローション、顔はクリームなど、部位に合わせて塗りやすいものを選ぶことが可能です。
  • 抗真菌外用薬:マラセチア菌の増殖を抑えます。症状が弱い場合には抗真菌薬外用薬のみで症状が改善することもありますが、一般的にはステロイド外用薬と併用して治療を行います。

その他、痒みがある場合には飲み薬の抗ヒスタミン薬が処方されたり、ビタミンB2やB6を併用したりすることもあります。

脂漏性皮膚炎は比較的薬が効きやすい疾患で、治療を開始すると、多くの場合、症状が改善していきます。ただし、良くなったからと言って自己判断で薬を中止しないようにしましょう。脂漏性皮膚炎は、再発しやすく、一度治ったと思っても薬をやめると再び症状が現れます。継続的に治療が必要なケースが多いため、主治医の指示に従って薬を続けるようにしましょう。

脂漏性皮膚炎の改善には生活習慣の見直しも重要

脂漏性皮膚炎を改善するためには生活習慣の見直しも重要です。特に次の点に気を付けましょう。

〇洗顔や洗髪、入浴で頭皮や身体を清潔に保つ

洗顔や入浴をして、皮脂汚れが溜まらないようにしましょう。ただし、石鹸などで強くこすったり、洗浄成分の強いものをあえて選ぶ必要はありません。自分の肌に合ったものを使い、やさしく丁寧に洗いましょう。石鹸が残らないようにしっかりとすすぐことも重要です。また、髪を洗う際にシャンプーやリンスなどを過剰に使うと、すすぎ残しの原因になります。適正量を使うようにしましょう。

〇顔に症状が出ている時にはメイクは控えるほうがベター

顔に赤みや鱗屑などが見られる場合には、メイクは控えたほうが安心です。どうしてもメイクをしなければいけない時は、できるだけ刺激の少ないものを選び、夜にしっかり落とすようにしましょう。ただし、その際もこすりすぎには注意しましょう。

〇バランスの取れた食生活を意識する

バランスの良い食事を心がけましょう。特にビタミンB群(B2やB6など)は皮脂の分泌を適正にコントロールする働きがあります。レバーやうなぎ、ホウレンソウ、トマトなど、様々な食材に含まれているため、意識して摂ると良いでしょう。反対に脂肪や糖分、辛い物、アルコールなどは摂りすぎないように気を付けてください。

〇睡眠不足やストレスの蓄積には注意する

睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスを乱して皮脂が増える原因になります。良質な睡眠をとれるように、生活リズムを整えたり、リラックスできる時間を確保したりしましょう。

フケや顔の赤みなど気になる症状がある時は皮膚科を受診しよう

お伝えしたように、成人以降に発症する脂漏性皮膚炎は継続的な治療が必要な病気です。脂漏性皮膚炎は痒みなどを伴わないケースもあるため、放っておいてしまう人も多いのですが、フケや顔などの赤みなどが続いている時は、皮膚科を受診しましょう。特にフケは、皮脂が多すぎても少なすぎても発生することがあり、良かれと思って間違った対処をしてしまいやすい症状です。また、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、酒さ(しゅさ)など、脂漏性皮膚炎と症状が似ている病気がいくつかあり、それぞれ治療法が異なります。原因がわからないまま市販薬を使ったり、誤ったセルフケアをしていると、なかなか改善しなかったり症状が悪化したりする可能性も。気になる症状がある時は皮膚科で相談するようにしましょう。

まとめ

  • 脂漏性皮膚炎は、皮脂分泌の多い部位にフケや赤み、鱗屑などが現れる慢性的な皮膚疾患である
  • 原因は皮脂量の増加によるマラセチア菌の増殖で、生活習慣の乱れ、ホルモン異常、ビタミン代謝の異常などが関係しているとされている
  • 成人型脂漏性皮膚炎の治療には、ステロイド外用薬や抗真菌外用薬が用いられ、継続的な治療が必要である
  • 生活習慣の改善が重要であり、適切な洗顔や入浴、バランスの良い食事、十分な睡眠とストレスケアがポイント
  • 症状が続く場合は自己判断でのケアを避け、皮膚科を受診して正確な診断と治療を受けることが重要である