「日光角化症」とは?初期症状や見分け方を専門家が解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「日光角化症」は、皮膚がんの一歩手前の状態です。早期に治療を始めると皮膚がんになるのを予防できますが、シミやイボと間違われやすいため、気づかないまま進行してしまうことがあります。この記事では、日光角化症の初期症状や見分け方のポイントなどについて、皮膚科の視点からわかりやすく解説します。

日光角化症とは?

日光角化症(Actinic Keratosis:AK)は、皮膚の表面を構成する表皮の細胞(角化細胞)が悪性化して異常な細胞が増えた状態です。日光角化症の段階では、異常な細胞は表皮にとどまっていますが、放っておくとその奥にある真皮にまでがん細胞が浸潤し、皮膚がんの一種である「有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)」に進行することがあります。このことから、日光角化症は有棘細胞がんの「前がん病変(がんの一歩手前の状態)」に分類されています。有棘細胞がんは他の部位へ転移する可能性がありますが、日光角化症の段階ではそのリスクはありません。だからこそ、日光角化症の段階で見つけて治療することが極めて重要です。
日光角化症の最大の原因は、長年にわたって浴びてきた紫外線です。紫外線は、皮膚細胞の核にあるDNAを損傷します。このダメージが長期間にわたって蓄積すると、表皮の細胞が異常な増殖を始めます。この異常な角化細胞が表皮で増えた状態が、日光角化症です。
日光角化症は、顔、頭部(毛の薄い部分)、耳、手の甲、前腕、首など主に長期間、日光にさらされてきた部位に発生します。特に若い頃から日焼けをしてきた人や、スポーツ、農作業など屋外で活動する機会が多かった人、色白で日焼けしやすい体質の人が、60~70代になって発症するケースが多くみられます。

日光角化症の初期症状と見分け方

日光角化症には主に3つのタイプがあります。

  • 紅斑型:赤みを帯びた斑点(紅斑)が現れ、鱗屑(りんせつ:角質が白っぽいカサブタのようになったもの)を伴うこともあります。初期はとても小さな斑点ですが、次第に大きくなり1~2cmほどになります。紅斑型は、日光角化症の中で最も多いタイプです。
  • 色素沈着型:褐色のシミがまだら状に発生します。表面がやや盛り上がっているものもあります。
  • 疣状型(ゆうじょうがた):イボのようなものが現れます。突起の周りは赤くなることが多いです。

日光角化症の場合、痒みや痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、出血したりカサブタができたりすることがあります。こうした初期症状から、加齢によるシミ(老人性色素斑:ろうじんせいしきそはん)や老人性イボ(脂漏性角化症)、あるいは皮膚炎などと間違われることも少なくありません。

ただし、決定的に違う特徴があります。それは感触です。日光角化症に指で触れてみると、病変の表面がまるで紙やすりのようにざらざら、ガサガサとしていて硬さがあります。これは、紫外線によって異常をきたした角化細胞が表面に積み重なって剥がれにくくなり、カサブタのようになっているためです。加齢によるシミや老人性イボの場合、このような硬いざらつきはありません。
もし、顔や手の甲などに治らないカサつきや、触るとざらざらしたシミのようなものを見つけたら、放っておかず専門医を受診してください。さらに、病変が急速に大きくなる、厚く盛り上がる、硬いしこりができる、表面が崩れて出血しやすくなるといった変化が見られた場合は、有棘細胞がんへの移行が強く疑われます。すぐに受診しましょう。

日光角化症の診断と皮膚がんへの進行過程

日光角化症は、特徴的なサインはあるものの、視診や触診だけで診断が決まるわけではありません。皮膚科では、病変を正確に診断し皮膚がんへの進行リスクを評価するために、ダーモスコピー(専用の拡大鏡で、特有の所見がないかを調べる)や皮膚生検(病理組織検査)などの専門的な検査を行います。
確定診断に至るために重要なのは皮膚生検で、局所麻酔を使い、病変のごく一部を採取して顕微鏡で組織の状態を調べます。この検査によって、異常な細胞が皮膚のどの深さまで及んでいるか、そして有棘細胞がんへの移行が始まっていないかを正確に判断できます。
有棘細胞がんは、リンパ節や他臓器へ転移するリスクを伴います。生命に関わることもあるため、日光角化症の段階で発見し、異常な細胞をすべて取り除くことが極めて重要です。

日光角化症の治療法

日光角化症の治療の目的は、異常な細胞を可能な限り除去し、皮膚がんへの移行を阻止することです。主に以下のような治療法が用いられます。

○外科的切除

周囲の正常な皮膚を含めてメスで病変を切り取る方法です。この治療の最大のメリットは、がん細胞を完全に取り除いて根治することができる点です。悪性化が強く疑われる場合や、他の治療法で再発を繰り返す場合に特に推奨されます。一方で、病変が顔に多発している場合や合併症がある場合などは、他の治療法を選択することがあります。

○外用薬による治療

「イミキモドクリーム」や「5-フルオロウラシル(5-FU)軟膏」を塗布する治療法です。病変が広範囲に及ぶ場合や、手術が難しい部位に適しています。ただし、治療期間が数ヶ月に及ぶこともあり、また治療中、塗布部位に赤みやただれ、痛み、むくみなどの副作用が生じることがあります。

○凍結療法(液体窒素)

マイナス196℃の液体窒素を病変部に当てて、異常細胞を凍結・破壊し、その後に自然に脱落させる方法です。病変が少ない場合に行われます。保険適用の治療法ですが、病変が深い場合は再発のリスクがあります。また、治療後に水ぶくれや色素沈着、あるいは瘢痕(はんこん:傷痕)が残る可能性があるため、顔など見た目が重視される部位では、他の治療法が検討されることもあります。

○炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)

水分を含むものに反応する炭酸ガスレーザーで病変部を蒸散(削り取る)してがん細胞を除去する方法です。周りの健康な皮膚へのダメージが少なく瘢痕が残りにくい治療で、悪性化の可能性が低いと医師が判断した場合に行われます。

こうした治療法の中から、病変の数、大きさ、深さ、部位、健康状態などを総合的に判断し、最適な治療法が選択されます。治療方針を決める上で心配なことや分からないことがある場合は、遠慮せずに主治医に伝えましょう。

シミやイボと間違われやすい日光角化症ですが、触るとざらつきやガサガサとした硬い手触りがあります。このサインを見逃さず、早期に専門的な治療を受けることが、有棘細胞がんへの進行を防ぐ鍵となります。治らないカサつきやざらつきに気づいたら、すぐに皮膚科を受診しましょう。

まとめ

  • 日光角化症は、長年の紫外線ダメージによって生じる皮膚がん(有棘細胞がん)の前がん病変
  • 顔、頭、耳、手の甲など、日光を多く浴びる部位に発生しやすい
  • 初期は赤みやカサつき、ざらざらとした手触りが特徴で、シミやイボと間違われやすい
  • ダーモスコピーや皮膚生検で正確な診断が可能
  • 主な治療法は外科的切除、外用薬、凍結療法、炭酸ガスレーザーで、病変の状態などにより選択される
  • 放置すると有棘細胞がんに進行する可能性があるため、早期発見・早期治療が重要