生まれつき痣(あざ)ができるのはなぜ?皮膚科ではどんな治療をするの?

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

生まれつきのあざといえば、赤ちゃんのお尻などに見られる青あざ「蒙古斑(もうこはん)」が有名ですね。蒙古斑の多くは、とくに治療をしなくても、年齢とともに治っていきますが、まれにそのまま残ることがあります。また青あざ以外にも、茶あざや赤あざなど、生まれつきのあざはいくつかあります。では、こうしたあざは、どうしてできるのでしょうか?その原因や皮膚科での治療法を解説します。

そもそもあざって?内出血やシミとはどう違うの?

そもそもあざとは、一部の皮膚の色が変化して目立っている状態(色素斑)で、あざの色によって「青あざ」「茶あざ」「赤あざ」「黒あざ」などとも呼ばれています。あざは思春期以降にできるものもありますが、基本的には生まれつきのものや、生後すぐにできたものを指します。あざの多くは身体に害を与えることはありませんが、とくに人目に付きやすい場所にできている場合には、コンプレックスとなることがあります。
ところで、一般的に「あざ」と聞くと、腕や足などをぶつけた時にできる「うちみ(内出血)」を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれども、このような内出血による皮膚の色の変化は生まれつきできたものではありませんし、時間が経てばだんだんと良くなっていきます。ですから、専門的には内出血はあざの一種とは考えられていません。
また、同じように混同されやすいものとしてシミがあります。たしかにシミも皮膚の色が変わる現象ですが、これは後天的に色素沈着を起こしている状態です。ですから、専門的にみるとシミもあざとは全く違うものといえます。

あざはなぜできるの?

あざの原因を知るために、簡単に皮膚のしくみについてご説明しましょう。ヒトの皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下組織という3層構造をしていて、表皮にはメラニン色素を作る「メラノサイト」があります。メラノサイトは通常、表皮に存在していますが、まれに皮膚のさらに奥にある真皮に存在し、そこでメラニン色素を作り出すことがあります。この真皮で作られたメラニン色素によって、皮膚の色が変化した状態が「あざの正体」です。
お伝えしたように、あざには青、茶色など、いろいろな色がありますが、この色はメラニン色素ができる皮膚の場所によって決まります。たとえば、真皮の中でも深いところにできるあざは青っぽく、反対に浅いところにできるあざは茶色っぽく見えます。さらに、色の濃さにもメラニン色素が関係していて、メラニン色素の量が多ければあざの色は濃くなり、少なければ色が薄くなります。
一方で赤あざはメラニンではなく、血管が関係しています。皮膚を流れる血管が異常に増殖したり、奇形を起こすことで、皮膚が赤く変色するもので、「血管腫」と呼ばれています。

あざの種類

ここまで、あざの原因や色の違いについて解説しましたが、実は同じ色であっても、その種類は異なります。たとえば青あざの中にも、蒙古斑や太田母斑などいくつかの種類があります。そこで、代表的なあざの種類をみていきましょう。

(1)青あざ

〇蒙古斑

生後1週間~1か月ころまでにできる青あざです。「未熟であること」の比喩表現で「尻が青い」といわれますが、これは蒙古斑に由来するといわれています。
一般的に蒙古斑は腰やお尻などにでき、2歳ころまでに色が濃くなります。ただし、成長にともなって消えることがほとんどで、4~10歳ころになると色が薄くなっていきます。
また、蒙古斑は人種によって発生頻度に違いがあり、とくに黄色人種(モンゴロイド)はできやすいことがわかっています。日本人も例外ではなく、ほぼ100%の人に蒙古斑ができるといわれています。
なお、腰やお尻以外の場所にできる青あざは「異所性蒙古斑」と呼ばれ、区別されています。異所性蒙古斑は、お尻などにできる蒙古斑よりも消えにくいといわれています。

〇太田母斑、伊藤母斑

太田母斑は、頬や目の周り、おでこなどにできる青紫色や灰青紫色のあざで、通常は顔の片側のみに発生します。太田母斑の多くは1歳頃までにできますが、思春期や成人以降に発生することもあります。また、発生頻度は0.1~0.2%で、女性に多い点も特徴の一つです。
伊藤母斑は、太田母斑と同じく灰青紫色のあざですが、肩のまわりや上腕などにできます。

〇青色母斑(せいしょくぼはん)

「青色母斑細胞」が増殖することでできるあざです。発生頻度は3%ほどで、ほとんどが乳幼児期までに発生します。直径1cm以下のあざで、平べったいものから、隆起したしこり状のものまであります。ほかのあざと同じく良性のものが多いですが、大きいものは悪性化する可能性があります。

(2)茶あざ

〇カフェオレ斑・扁平母斑

生まれつき、あるいは生後間もなくにできる淡い茶褐色のあざです。直径0.5cmの小さなものから、10cmの大きいものまであります。こうしたあざが多発する場合、神経線維腫症1型などの病気が影響している可能性があります。日本では、このような基礎疾患があって発生するものを「カフェオレ斑」、基礎疾患がないものを「扁平母斑」と呼んでいます。

〇ベッカー母斑(遅発性扁平母斑)

大きな茶褐色のあざで、思春期に発生します。肩のまわりや胸の前側に発生することが多いものの、手足や腹部にでることもあります。患者のおよそ半数は、あざ部分に多毛をともなうことがわかっています。

(3)赤あざ(血管腫)

お伝えしたように、血管が異常に増殖したり、奇形を起こすことでできるものです。血管奇形を起こすことでできる「単純血管腫」と、生まれて間もないうちに皮膚表面の血管が盛り上がってできる「いちご状血管腫」があり、単純血管腫の一部では赤あざができることがあります。

(4)黒あざ(色素性母斑)

「母斑細胞」がメラニン色素を作り出すことでできる良性の腫瘍を「色素性母斑」といいます。色素性母斑にはいくつかのタイプがあり、「ほくろ」もその一つです。色素性母斑には、ほかに「通常型」や「巨大型」があり、この2つが「黒あざ」と呼ばれています。とくに巨大化した黒あざは悪性化することがあります。

お伝えしてきたように種類によっては悪性化するものもありますが、ほとんどのあざは身体に害を与えることはありません。けれども、見た目の問題などを気にして治療を希望する人が多くいます。

皮膚科での治療法

あざの治療は、皮膚科などで受けられます。おもな治療法はレーザー治療で、あざの種類によって、レーザーの種類が使い分けられています。たとえば、青あざではQスイッチ・ルビーレーザーやQスイッチ・アレキサンドライトレイザーが、赤あざには色素レーザー(Vビームレーザーなど)が有効です。一方、茶あざもレーザー治療が行われますが、ほかのあざよりも効果が出にくいといわれています。また黒あざは、切除する場合とレーザー治療を行う場合とがあります。こうしたあざの治療は保険適用内で受けられる場合が多いため、費用が気になる人は、皮膚科に問い合わせてみるとよいでしょう。

生まれつきのあざは、時に本人やご家族にとって精神的な負担となることがあります。この頃はいろいろな治療法がありますから、ひとりで悩まず、病院で相談してみてくださいね。

まとめ

  • あざは、一部の皮膚の色が変化して目立っている状態(色素斑)
  • あざは、基本的には生まれつきのものや、生後すぐにできたものを指す
  • あざの多くは、身体に害を与えることはないが、コンプレックスとなることがある
  • 一般的に「あざ」といわれる内出血は、医学的にはあざではない
  • シミは後天的な色素沈着で、あざとは別物
  • あざは、真皮で作られたメラニン色素によって、皮膚の色が変化した状態
  • あざの色は、メラニン色素が皮膚内のどこにできるかによって、決まる
  • ほかのあざとは違い、赤あざは血管の増殖や奇形によって起こる
  • 青あざには、蒙古斑、大田母斑、伊藤母斑、青色母斑などがある
  • 茶あざにはカフェオレ斑、扁平母斑、ベッカー母斑などがある
  • 赤あざは血管腫のこと
  • 黒あざは色素性母斑の一種
  • おもなあざの治療法はレーザー治療だが、種類によっては切除することもある
  • あざの治療は保険適用内でできることも多いので皮膚科に相談するとよい