医療コラム
首や手は年齢の出やすいパーツ 日々のケアから皮膚科でできる治療までご紹介
年齢が出やすいパーツと聞いてまず思いつくのは、顔でしょう。とくに目元や口元を気にする人は多いですが、実は首や手も、年齢が現れやすいパーツです。しかも、人に見られていることも多いので、ケアを怠っていると老けた印象を与えかねません。そこで、手や首のケア方法や、皮膚科でできる治療法をご紹介します。
首に老化のサインが現れる理由とは?
顔と同じように、首や手の皮膚も、年齢とともにコラーゲンやエラスチンなど、ハリに関わる細胞が減少するため、しわやたるみが目立つようになります。さらに、次の要因が重なると、老化のサインが現れやすくなります。
〇首特有の性質
縦方向に動かすことの多い首は、横方向に深いしわができやすくなります。また、顔に比べて皮脂の量が少ないので、乾燥しやすい部位でもあります。とくに女性の場合、更年期以降になると、皮脂の量が大きく減少するので、もともと皮脂量の少ない首は乾燥しやすく、しわもできやすくなります。
〇不十分な紫外線対策
顔はしっかり紫外線対策をしているのに、首の対策をつい忘れてしまっている人が多いでしょう。中には日焼け止めクリームをしっかり塗っている、という人もいるでしょうが、夏場は汗とともに流れてしまうことが多く、こまめに塗り直していないと紫外線を浴びてしまいます。紫外線のダメージが蓄積すると、シミやしわの原因となります。
〇姿勢の悪さ
姿勢の悪さも首にしわができる原因となります。とくにスマホやパソコンを操作する際に猫背になっている人が多いですが、その姿勢に注目してみると、あごが二重あごになって、首にはしわができています。こうした姿勢を日常的にとっていると、気づいたときには深いしわになっている可能性があります。
ちなみに、ある研究(『頚部・デコルテの皮膚生理機能と形態特徴の加齢変化』 https://www.jstage.jst.go.jp/article/koshohin/37/2/37_81/_pdf)によると、首のしわは年齢とともにできる場所が拡がっていくことがわかっています。この研究では、首のしわは、はじめは前頚部(首の前側)のみにみられますが、加齢とともに側頚部(両側)、そして後頚部(後ろ側)にまで拡がっていく、という結果が報告されています。さらに首のシワの数は30代以降、徐々に増えていくので、早いうちからケアしておくことが、若々しい首を保つ秘訣といえるでしょう。
手に老化のサインが現れる理由とは?
次に、手の老化を加速させる要因を挙げていきましょう。
〇手洗いや水仕事などによる乾燥
手洗いや水仕事などで、何かと水に触れる機会が多い手は、とくに乾燥による皮膚のトラブルが起きやすい部位です。というのも、水やお湯で手を洗うと、皮膚の水分を保持する上で重要な皮脂も流されてしまうからです。失われた皮脂は、時間が経てば再び作られますが、頻繁に手洗いや水仕事を繰り返していると、皮脂の分泌が追いつかず、乾燥の原因になります。また最近は、アルコール消毒液などを使う機会が増えていますが、アルコールと一緒に必要な手の水分も一緒に蒸発してしまうため、乾燥が進む一因になります。乾燥は、しわの原因になります。
〇不十分な紫外線対策
首と同じように、紫外線も手に老化のサインが現れる一因といえます。とくに手の甲などは、紫外線対策がしにくい場所の一つです。というのも、たとえ日焼け止めクリームなどを塗っても、手洗いなどをくり返しているうちに、だんだん取れてきてしまうからです。また、べたつきやニオイなどが気になる、という理由で、そもそも手に日焼け止めを塗らない人もいるかもしれません。ただ、やはり手の甲にも紫外線は当たるので、気づかぬうちにそのダメージが蓄積しています。とくに自動車、自転車などを運転する人や、ガーデニングなど屋外で作業する機会が多い人などは、手の甲に紫外線をたくさん浴びている可能性があります。
〇加齢による血管の変化
手には、しわやシミ以外の老化のサインが現れることがあります。それは、血管の変化。加齢などによって、手の甲の血管が目立つようになってくることがあるのです。これは「ハンドベイン」とも呼ばれていて、血液の逆流を防ぐ弁がうまく働かなくなってしまうことが原因です。ほかの病気が原因の場合もありますが、体質や加齢、生活環境などが要因となることが多いといわれています。
年齢が出やすい首と手のセルフケア方法
首も手もまず重要なことは、基本的なケアをしっかり行うことです。たとえば、保湿。顔と同じように、保湿ケアをしっかり行いましょう。首の場合は、顔のお手入れや入浴の後、そのほか乾燥が気になるときなどに、クリームなどで保湿しましょう。また手の場合は、手洗いや手指の消毒、水仕事の後などに、こまめにハンドクリームで保湿することを心がけましょう。水仕事の際には、グローブを着用することも手の乾燥予防につながります。
そして、紫外線対策も重要です。日焼け止めのほかにも、UVカットのできるストールやアームカバー(手の甲まで覆うことができるもの)などを使うとよいでしょう。
さらに、首の体操やハンドマッサージもおすすめです。とくに首のしわやたるみは、あご周りの筋力の低下が原因になることがありますから、首やあごを動かすような体操を取り入れて筋肉をきたえましょう。また手は血行不良になると、皮膚の色がくすんで老けた印象を与えるため、ハンドマッサージなどを行い、血流を良くしておきましょう。
首と手のケア:皮膚科での治療法
お伝えしたセルフケアの方法は、首や手の老化を加速させないために必要ですが、すでにできてしまったしわやシミを改善するためには、やはり美容医療のチカラを借りることが、一番の近道といえるでしょう。クリニックごとに受けられる治療の内容は異なりますが、ここでは一例をご紹介しましょう。
〇首の治療法
お伝えしたように、しわやたるみの一因となるのが、加齢によるコラーゲンやエラスチンなどの減少です。そこで美容皮膚科では、熱エネルギーを与えてコラーゲンやエラスチンの産生を促す治療法が行われることがあります。たとえば、HIFU(高密度焦点式超音波)を利用した「ダブロ」「リフテラV」、超音波とラジオ波(電磁波の一種)を照射する「エクシリス」、ロングパルスYAGレーザーを空中照射する「ジェネシス/フェイスリフトレーザー」、皮膚に熱エネルギーを与えてコラーゲンの産生を促します。
またピーリング治療の中にも、首のハリやツヤの改善に効果を発揮するものがあります。たとえば、「コラーゲンピール」は、トリクロロ酢酸 (TCA)や低濃度過酸化水素、コウジ酸を配合した薬剤を浸透させるピーリングで、コラーゲンの産生が期待できます。コラーゲンピールは顔に対して行われることが多いですが、前頚部に対して治療を行うこともできます。
このほか、専用の機器を用いて電気穿孔法により皮膚にごく小さな孔を開け、美容成分を皮膚の内部にまで浸透させる「ケアシス(クライオエレクトロポーション)」という治療法もあります。
〇手の治療法
先ほどご紹介したコラーゲンピールや、ケアシス(クライオエレクトロポーション)などは、手のしわに対する治療でも行われることがあります。また、手のシミに対しては、光治療の一つである「フォトフェイシャル ステラM22/M22」「BBL」が有効です。レーザー治療に比べて痛みが少なく、広範囲に照射することができます。
このほかにも、美容皮膚科にはさまざまな治療法がありますので、悩んでいる方は一度、相談してみることをおすすめします。顔はもちろん、手や首もしっかりケアをして、健康的で美しい肌を目指しましょう。
まとめ
- 首や手は年齢の出やすいパーツ
- 首は、紫外線対策などのスキンケアが十分ではなかったり、姿勢の悪さなどの要因が加わることで、しわやシミなどができる
- これまでの研究で、首のしわは、はじめは前頚部のみにできるが、加齢とともに側頚部、後頚部にまで拡がっていくことがわかっている
- 手洗いや水仕事で水に触れる機会が多い手は、乾燥しやすく、ケアをしていないと、しわの原因になる
- 手の甲は、日焼け止めクリームなどを塗っても落ちてしまいやすいが、紫外線は当たるため、気づかぬうちにダメージが蓄積していることがある
- 「ハンドベイン」といって、加齢とともに手の血管が目立つようになる人がいるが、これもまた老けた印象を与える原因の一つになる
- 日々のお手入れでは、保湿ケア、紫外線対策、マッサージがおすすめ
- 美容皮膚科で行われる首のしわなどに対する治療には、コラーゲンの産生を促す「ダブロ」「リフテラV」「エクシリス」「ジェネシス/フェイスリフトレーザー」「エクシリス」「コラーゲンピール」、皮膚に小さな孔を開けて美容成分を浸透させる「ケアシス」などがある
- 手のしわに対する治療では、コラーゲンピールやケアシスが行われるほか、シミに対してはフォトフェイシャルが有効