在宅勤務でも日焼け対策は必要?ブルーライトが肌に与える影響について解説

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「第3の紫外線」とも呼ばれるブルーライト。なんとなく有害なイメージがありますが、実際、身体や肌にどのような影響があるのでしょうか。また、紫外線のように日焼け止めなどによる対策は必要なのでしょうか。ここでは、ブルーライトが身体や肌に与える影響と対策について解説します。

ブルーライトとは?

私たちはさまざまな種類の光に囲まれて生活しています。中でもヒトの目に見える光は可視光線と呼ばれていて、ブルーライトもその一つです。ブルーライトはその名の通り青色の光で、パソコンなどに使われているだけでなく、実は太陽光などにも含まれています。
光にはそれぞれ異なる波長があり、波長が短いほどエネルギーは強くなるという性質があります。たとえば、可視光線の波長は400~750nm(ナノメートル:100万分の1mm)、ブルーライトの波長は380~550nmです。つまり、可視光線の中で最も波長が短く、エネルギーが強いのがブルーライトということです。ちなみに、ブルーライトの次に波長が短いのは紫外線で、エネルギーもより強くなります。

ブルーライトは有害なもの?

ブルーライトはそれ自体が有害なわけではありません。けれども、可視光線の中でもっともエネルギーが強いので、長時間、強力なブルーライトを浴び続けると、人体に悪い影響を及ぼす可能性のあることがわかってきています。とくに問題視されているのが、目と体内時計への影響です。

〇目への影響

可視光線であるブルーライトは、そのエネルギーが目の奥にある網膜にまで達します。ブルーライトを長時間使用する生活が習慣化すると、網膜にある黄斑(おうはん)がダメージを受け、その結果、目の病気を発症する恐れがあります。たとえば、視力低下を引き起こす加齢黄斑変性症は、ブルーライトが引き起こす病気のひとつとして知られています。
また、ブルーライトが眼精疲労の一因になることもわかってきています。ブルーライトは波長が短く、その光が空気中の粒子にぶつかり散乱しやすいという特徴があります。そのため、ブルーライトを用いたディスプレイなどはまぶしさやちらつきが生じやすく、目のピント調節機能に負荷がかかり眼精疲労を起こしやすくなるといわれています。眼精疲労を放っておくと、肩こりや頭痛など、全身に症状が及ぶことがあります。

〇体内時計への影響

ヒトの身体には体内時計が備わっています。地球のリズムは24時間周期ですが、ヒトの体内時計の周期は25時間で、1時間ほどのズレがあります。このズレを調整しているもののひとつが、光です。ヒトは朝、光を浴びることで体内時計がリセットされ、またこれに反応して分泌されるホルモンの働きで夜眠くなる、というリズムが作られています。
ところが、スマートフォン(以下スマホ)やパソコンなどを夜遅くまで使用していると、本来、眠る時間帯にブルーライトなどの強い光を浴びてしまうことから、体内時計が乱れやすくなります。とくにブルーライトは、体内時計のリセットにかかわるホルモンの働きを抑えることが指摘されています。
体内時計が乱れると睡眠のリズムにも影響が及ぶため、布団に入っても寝付けない、熟睡できないなど、睡眠トラブルにつながることがあります。またその状態が長く続くと、頭痛や食欲不振、倦怠感など、他の症状も現れるようになります。

このように、ブルーライトはその使い方次第で身体に悪影響を及ぼす可能性があります。

ブルーライトは肌にも悪影響?

さらに最近では、肌への影響も注目されるようになってきています。同じく光の一種である紫外線は、ダメージが蓄積するとシミやくすみ、しわなど、光老化の原因になることが知られていますが、ブルーライトはどうなのでしょうか。
ブルーライトが肌に悪い影響があるのではないか、といわれる理由として、次の2つがあげられます。

(1)睡眠の質が低下し、肌荒れの原因になるため
お伝えしたように、ブルーライトを夜間に浴びると、体内時計が乱れて睡眠の質が低下する可能性があります。睡眠不足は肌荒れやニキビ、乾燥、くすみなどの原因になることから、とくに夜間にスマホなどを使用することは、肌にもよくないといえます。

(2)強度のブルーライトを浴び続けることで酸化が進む可能性があるため
紫外線を浴びると肌が酸化して光老化が進んでしまいますが、ある研究では、強度のブルーライトを浴びることでも、肌内部で過酸化脂質(脂質が酸化したもの)が増えることが明らかになりました。
ブルーライトが肌に何らかのダメージを与える可能性はゼロではないので、その影響が気になる人は、紫外線対策とあわせてブルーライト対策も行ったほうがより安心できるでしょう。

ブルーライト対策

ブルーライトはそれ自体が有害なわけではなく、長時間あるいは夜間に浴びることが問題になります。近距離で使うことの多いパソコンやスマホの使用時間を見直すことが大切です。とくに、寝る前に暗い部屋でスマホを見ることは目によくありませんし、体内時計が乱れて睡眠の質が低下する原因になるのでやめましょう。
対策のひとつとして、夕方以降にスマホを使う場合にはナイトモードに設定し、画面の明るさを調節すると、ブルーライトの量を減らすことができます。また、仕事でパソコンやスマホを長時間使わざるを得ない場合には、液晶画面にブルーライトをカットできる保護フィルムを貼ったり、ブルーライト対応のメガネをかけたりするのもおすすめです。あわせて適度に休憩をはさむようにして、ブルーライトを浴びる時間を減らすことも重要です。

とくに肌への影響が気になる人は、ブルーライトカット効果のある化粧品を使うのも方法のひとつです。たとえば、最近ではブルーライトをカットできる成分を含んだ日焼け止めが販売されています。とくに注目されているのが「酸化セリウム」と呼ばれる天然由来の紫外線散乱剤で、従来の成分では対応できない波長の光もカットできるといわれています。普段からパソコンやスマホを長時間使うことが多い人は、こうした化粧品を取り入れてみるのもよいでしょう。

あわせて美肌を目指すためには、日ごろのスキンケアをしっかり行うことも大切です。とくに肌の酸化や老化を防ぐためには、紫外線対策が欠かせません。紫外線のうち波長の長いUV-Aは窓をも通過するので、在宅勤務で家にいることが増えた人も油断は禁物です。日焼け止めを使って、しっかり対策をしましょう。
さらに、酸化によるダメージを抑えたいときには、身体の内側からケアするのもおすすめです。ビタミンCやビタミンEには抗酸化作用があるので、こうした栄養素を含む食品を摂ることも酸化予防に役立ちます。
その他、生活習慣を整えること、ストレスをためないことも、身体の酸化を防いで若々しい肌をキープするためには欠かせません。

私たちの生活に欠かせないブルーライト。対策を行いながら上手に付き合っていきたいものですね。

まとめ

  • ブルーライトは可視光線の一つで、その名の通り青色の光のこと
  • ブルーライトは可視光線の中でもっとも波長が短く、エネルギーが大きい
  • ブルーライトは可視光線の中でもっともエネルギーが強いので、長時間浴びると、目の病気や眼精疲労の原因になったり、睡眠の質が低下する可能性がある
  • ブルーライトの肌への影響について、肌内部の過酸化脂質が増える可能性が指摘されている
  • ブルーライトによって睡眠の質が低下すると、肌荒れやニキビ、乾燥、くすみなどが起こりやすくなる
  • 対策として、パソコンやスマホなどの使用時間を見直すことや、画面の明るさを調節すること、ブルーライトカット効果のある保護フィルムやメガネを使う、といった方法がある
  • ブルーライト対応の化粧品や日焼け止めを使うのも方法のひとつ