老人性いぼを自分で取ることはできる?原因や皮膚科での治療についても解説

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

年齢とともに目立ちやすくなる「老人性いぼ」。基本的に良性のできものですが、コンプレックスになることもあります。「気になるから」と自己流のケアをすると、かえっていぼが大きくなってしまうことも。適切に対処するために、原因や皮膚科での治療法を解説します。

いぼの種類は様々

そもそも「いぼ」という言葉は一般的に使われている俗称で、皮膚に盛り上がってできる小さなできものを広く意味します。
その原因は大きく分けると2種類あります。最も多いのは、ウイルスに感染することが原因でできるいぼです。いくつかの種類がありますが、皮膚科医などが一般的に「いぼ」と呼ぶのは、この一種である「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」のことです。
また、もう一つは紫外線や加齢が原因となるもので、「老人性いぼ」もこのタイプです。
このようないぼの種類や原因は、見た目だけで判断することが難しく、正しい診断を受けることが重要です。いぼは基本的に、生命を脅かす危険はありませんが、いぼと思って様子をみていたものが悪性腫瘍だった、というケースも稀に見受けられます。ウイルス性のいぼは特に、対処を誤ると周りの人に感染したり悪化したりすることがあるため、早めに皮膚科を受診しましょう。

老人性いぼの特徴

老人性いぼは、医学的に「脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」と呼ばれるもので、早ければ30代から始まり、中年以降に多く見られます。紫外線による長年のダメージや皮膚の老化が原因でできるいぼで、シミと混在していたり、シミが時間の経過とともに老人性いぼになることもあります。ウイルスが原因でできる尋常性疣贅などとは異なり、他の人にうつることはありません。
見た目は褐色や黒色が多く、大きさは直径数ミリのものから2〜3cm程度の大きさになるものまであります。いぼの表面が硬く盛り上がっていて、ザラザラとしているのが特徴です。
老人性いぼができやすいのは、顔面・首から前胸部にかけてや、上背部など、日光が当たりやすい部分ですが、脇の下やお腹まわり、太もも、といった日光が当たりにくい部分にできることもあります。稀にかゆみを伴う場合もありますが、基本的に自覚症状はありません。
このような特徴をもつ老人性いぼですが、良性腫瘍のため、悪性化することはありません。ただし、自然に消えることはないため、見た目が気になってしまうことがあります。老人性いぼをできるだけ増やさないためには、原因を踏まえた予防が重要です。

老人性いぼの原因と対策

お伝えしたとおり、老人性いぼの大きな原因の一つは紫外線です。肌にはメラニンという色素があり、紫外線を吸収して肌を守る役割を担っています。メラニン色素はシミの原因にもなるため悪者にされがちですが、身体にとって必要なものでもあるのです。ところが、紫外線を浴びすぎると、メラニンを作るメラノサイトが活性化してメラニンが大量に生成されます。そして、作られたメラニンが色素沈着を起こすことでできるのが、シミです。さらに、皮膚細胞中のタンパク質が異常に増殖し角質が厚くなると、皮膚が盛り上がって老人性いぼを発症すると考えられています。
紫外線が原因で作られる不要なメラニン色素や角質は、肌の生まれ変わりのサイクルであるターンオーバーが整っていれば、スムーズに排出されていきます。ところが、加齢や不規則な生活などによってターンオーバーが乱れると、メラニン色素が沈着してしまうため、角質がより厚くなってシミやいぼの発生につながってしまうのです。
老人性いぼを予防するためには、まずは紫外線対策を徹底し、生活リズムを見直してターンオーバーを整えることが重要です。

老人性いぼの治療法

いぼの治療法として、ドラッグストアなどでは塗り薬や貼り薬も販売されていますが、それらはおもにウイルス性のいぼを治すためのものです。老人性いぼをセルフケアで治すことは難しく、根本的に取るためには皮膚科での治療が必要です。
皮膚科の治療として選択肢となるのは、次のようなものです。

〇冷凍凝固療法

液体窒素で患部を冷凍凝固し、いぼの部分の皮膚細胞を破壊して除去します。治療中や治療後に少なからず痛みを伴い、完治するためには繰り返し治療を受ける必要があります。軽く冷凍するとすぐに再発したり、強く冷凍すると瘢痕が残ったりする可能性があるほか、炎症後色素沈着が残るケースもあるため、特に顔への治療は慎重に検討しましょう。

〇炭酸ガスレーザー

老人性いぼの治療として最も一般的に行われている方法です。水分を含むものに吸収される性質をもつ炭酸ガスレーザーを患部に当てると、組織を熱エネルギーに転換して蒸散させることができます。液体窒素による冷凍凝固療法よりも色素沈着が起こる期間は短く、ほとんどの老人性いぼを治療することができます。

その他、電気メスによる切除や電気焼灼といった方法もあります。いずれの治療も、老人性いぼを完治するためには皮膚の深いところにある基底層の異常な細胞までを取り除くことが重要です。けれども、深い部分を治療すると瘢痕が残る可能性が大きくなり、表面だけの治療では再発する可能性が高くなってしまいます。それぞれの治療にメリットとデメリットがあるため、老人性いぼのできている部分や大きさなどを踏まえて、経験豊富な医師の適切な診療を受けることが望ましいでしょう。

老人性いぼには適切な予防と治療を

老人性いぼは紫外線や加齢によって誰にでもできる可能性があるもので、大きな心配はいりません。ただし、顔など目立つ部分にできるとコンプレックスにもなりやすいため、日頃から日焼け止めなどによる紫外線対策を徹底したり、ターンオーバーが整うように生活習慣を意識したりして予防しましょう。保険外診療によるケミカルピーリングなど、皮膚のターンオーバーを整えるといった施術もおすすめです。これらの対策は老人性いぼだけでなく、シミやしわ、たるみといった肌トラブルの予防にも有効です。
また、できてしまった老人性いぼが気になる場合は、自分で取ろうとせずに、皮膚科で適切な治療を受けることが重要です。治療は保険外診療となりますが、医師の判断によっては保険適応となることもあります。費用や治療期間も含め、まずは一度相談してみましょう。

まとめ

  • いぼの原因は、ウイルスによるものと紫外線や加齢によるものに大別される
  • 紫外線や加齢が原因でできる老人性いぼは医学的には「脂漏性角化症」と呼ばれる
  • 老人性いぼは良性の疾患で、周りの人にうつるものではない
  • 老人性いぼは褐色や黒色が多く、表面が硬く盛り上がっていて、ザラザラとしているのが特徴
  • 顔面・首から前胸部にかけてや上背部などにできやすく、自覚症状はほとんどない
  • 老人性いぼを予防するには、紫外線対策を徹底し、ターンオーバーを整えることが重要
  • 老人性いぼはセルフケアでは治せないため、皮膚科での治療が必要
  • 皮膚科で最も行われるのは、炭酸ガスレーザーによる治療
  • 基本的に治療は保険外診療だが、保険適応となる場合もあるため、まずは診察を受けて相談することが大切