肌は弱酸性だとなぜ良いの?肌のpHバランスを整える必要性について

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

「肌は弱酸性に保ったほうが良い」という話を聞いたことがある人は多いでしょう。また「肌に良さそう」と弱酸性の洗顔料を使っている人がいるかもしれません。では、なぜ肌は弱酸性が良い、と言われるのでしょうか。また洗顔料は弱酸性のものを選んだほうが良いのでしょうか。今回は、その理由と洗顔料の選び方などについて解説します。

「肌のpHバランス」とは

そもそも「弱酸性」とはどういう状態を指すのでしょうか。肌を含む何らかの物質が酸性かアルカリ性なのかは、その物質に含まれる水素イオンの濃度によって決まります。その値を示す指標として使われているのが、「pH」です。pHとは、物質の酸性・アルカリ性の度合いを表していて、「水素イオン濃度」や「ピーエイチ」と呼ばれています。中には、「ペーハー」と呼ぶ人もいますが、JIS規格では「ピーエイチ」という読み方を採用しています。
pHの値は0~14までで、数字が小さいほど酸性に、大きいほどアルカリ性に傾いていることを示しています。また中間の7は中性であることを意味します。
肌の場合はpHが4.5~6.0、つまり弱酸性だと健康な状態を保つことができます。また酸性に傾くと脂性肌になりやすく、反対にアルカリ性に傾くと乾燥肌になりやすいとも言われています。肌は脂っぽくなりすぎても乾燥しすぎても、トラブルが起きやすくなります。ですから、pHバランスを整えることは、肌を健康な状態に保つために重要なことです。

pHバランスに関係する皮膚の常在菌

pHバランスが肌の状態に影響を与える理由、それに大きく関係しているのが常在菌です。肌には実に多くの常在菌が棲みついています。「菌」と聞くと悪いイメージを持ってしまいがちですが、肌を健康に保つ上で重要な役割を果たしている常在菌はたくさんいます。
肌において代表的な常在菌は、表皮ブドウ球菌です。表皮ブドウ球菌は「美肌菌」とも言われていて、皮脂や汗をエサにして、脂肪酸やグリセリンを作り出しています。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち、抗菌ペプチドを作ることによって肌荒れやアトピー性皮膚炎を引き起こす黄色ブドウ球菌の増殖を防いでいます。また、グリセリンには皮膚のバリア機能を維持する役割があります。
表皮ブドウ球菌が棲みつきやすい環境はpH5前後、つまり弱酸性の状態です。ですから、肌を弱酸性の状態に保つことは、表皮ブドウ球菌が棲みやすく、肌トラブルが起こりにくい状態を作ることを意味しているのです。

洗顔料は弱酸性のものを使うべき?

「健康な肌が弱酸性なら、洗顔料も弱酸性のものを使ったほうが良い」と思う方も多いでしょう。けれども、一般的な石鹸や洗顔料は弱アルカリ性です。その理由は、アルカリ性は洗浄作用に優れていて、皮脂や汗、メイク汚れ、角栓といった脂分の多い汚れをしっかり落とせるからです。また酸性の汚れと中和するため、洗浄力が適度に抑えられる、水で流しやすいというメリットもあります。中には「アルカリ性の洗顔料を使うと肌もアルカリ性になるのでは?」と思う人がいるかもしれません。しかし、肌には「アルカリ中和能」という働きがあり、洗顔後、一時的にアルカリ性に傾いたとしても時間が経つと自然に弱酸性の状態に戻るため、過度に心配する必要はありません。
ただし、肌が敏感な状態になっている時は、アルカリ性の石鹸や洗顔料が負担になる場合があります。特に肌を守るバリア機能が低下していると、「アルカリ中和能」も落ちてしまうため、時間が経っても弱酸性の状態に戻りにくくなってしまいます。ですから、肌の調子が悪い時や敏感な時は、より負担の少ない弱酸性の洗顔料を使うことが選択肢の一つになります。

弱酸性の洗顔料を使う時に気をつけるべきこと

お伝えしたように、弱酸性の洗顔料は肌が乾燥していたり敏感になっていたりする時にはおすすめです。けれども、デメリットがないわけではありません。特に弱酸性の洗顔料はアルカリ性のものに比べて洗浄力は劣ります。そのため、汚れが溜まっている時には、弱酸性の洗顔料だけではきちんと落ちない可能性があります。たとえば皮脂が出やすい時季や濃いメイクの時にはアルカリ性の洗顔料を使い、乾燥しやすい時には弱酸性のものを選ぶ、といったように肌の状態に合わせて使い分けるのも方法の一つです。
また、市販されている弱酸性の洗顔料のすべてが低刺激とは限りません。洗顔料などに配合されている合成界面活性剤が肌に刺激となってしまう可能性があるからです。「弱酸性の洗顔料だから大丈夫」と決めつけるのではなく、成分表示を確認したり、使用後の肌の状態をチェックして、自分に合った洗顔料を選ぶことが肝心です。

洗顔料選びだけじゃない!肌を弱酸性に保つためにできること

肌のpHバランスを整えるためには、洗顔料選び以外にも注意したいことがあります。

・顔の洗い方を見直す

クレンジングや洗顔の際にゴシゴシと力を入れて洗ってしまうと、バリア機能が低下したり、表皮ブドウ球菌などの肌に良い常在菌が一緒に流されてしまいます。洗顔料を泡立てて泡で包むようなイメージでやさしく洗顔しましょう。また、ぬるま湯で洗うこともポイントです。お湯の温度が熱すぎると必要な角質層や皮脂まで剥がれ落ちてしまいます。その際に表皮ブドウ球菌なども流されてしまうため、気をつけましょう。

・洗顔の回数に気をつける

洗顔などで失われた表皮ブドウ球菌が再び活動するまでには、8~10時間程度かかると言われています。そのため、頻繁に洗顔をしてしまうと、表皮ブドウ球菌が再活動する前にまた流されてしまうことになります。洗顔料を使った洗顔は1日1~2回にとどめるようにしましょう。

・長時間の入浴を避ける

美容のために長風呂をしている人がいるかもしれません。けれども、30分以上お湯に浸かっていると、皮膚表面の角質層が剥がれ落ちやすくなり、一緒に表皮ブドウ球菌も流れてしまいます。肌のpHバランスを整えるためには、長時間の入浴は避けたほうが良いでしょう。

・運動する

汗は表皮ブドウ球菌のエサとなります。そのため、運動によって適度に汗をかくことは肌のpHバランスを整える上でもおすすめです。

・保湿ケアや紫外線対策を行う

バリア機能が低下しているとアルカリ中和能が落ちてしまい、肌を弱酸性に戻すまでに時間がかかってしまいます。洗顔後は保湿ケアをすぐに行い、肌が弱酸性に戻りやすい環境を作ることが重要です。また、保湿の際に弱酸性の化粧水を使うと、肌の状態も弱酸性に戻りやすくなります。
さらに、紫外線対策もバリア機能が低下する要因になります。紫外線対策もしっかり行いましょう。

ここまで肌のpHバランスを整える必要性や、日常生活で取り入れられる美肌習慣をご紹介しました。肌を弱酸性に保つ方法として洗顔料選びに注目が集まりやすいのですが、他にも様々な要因がpHバランスに影響します。肌を弱酸性の状態に保てるように、普段の生活を見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 健康な肌はpHが4.5~6.0の弱酸性であり、pHバランスを整えることが肌の状態を良好に保つために重要
  • 表皮ブドウ球菌などの肌に良い常在菌が、肌を弱酸性に保つことで活動しやすくなり、肌トラブルの予防に役立つ
  • 洗顔後の肌は自然に弱酸性に戻る能力を持っている
  • 肌が敏感な場合やバリア機能が低下している場合は、弱酸性の洗顔料を選ぶことも選択肢の一つ
  • 弱酸性の洗顔料は弱アルカリ性の洗顔料に比べて洗浄力が劣る場合があるため、肌の状態に合わせて使い分けることが推奨される
  • すべての弱酸性洗顔料が肌にやさしいわけではないため、成分表示を確認し、自分の肌に合った製品を選ぶことが重要
  • 正しい洗顔方法を心がけ、長時間の入浴を避ける、適度に運動する、保湿ケアや紫外線対策を行うなど、日常生活のちょっとした習慣を見直すことも肌を健康な状態に保つことにつながる