ケアシス(クライオエレクトロポレーション)とイオン導入の違いは?薬剤によって効果は変わる?

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

肌への負担が少ない施術として知られるケアシスとイオン導入。どちらも美容成分を効果的に肌の奥へ届ける施術ですが、この2つはどう違うのでしょうか。また、使用する薬剤によって効果は変わるのでしょうか。今回は美肌を目指す人が知っておきたい、ケアシスとイオン導入の基礎知識や違いについてお伝えします。

ケアシス(クライオエレクトロポレーション)とは

ケアシス(クライオエレクトロポレーション)は、「電気穿孔法」とも呼ばれるエレクトロポレーションの技術により美容有効成分を導入する施術で、シミやくすみ、キメ、小じわといった肌の様々な悩みを改善する効果が期待できます。市販のスキンケア製品も同じような効果を謳っていますが、肌の表面にある角質層には、外部から異物が侵入するのを防ぐ仕組みが備わっています。そのため、セルフケアで美容有効成分を届けられる範囲は限られています。そこで、短いパルスの電流を流して角質細胞の細胞膜に数秒〜数分間、電気的な穴を開けた状態にすることで、薬剤を肌の奥まで導入することが可能となります。
このエレクトロポレーション技術と、45°C〜マイナス25°Cまでの範囲で温度調節をしながら薬剤を導入できる「クライオ技術」を組み合わせたものが「ケアシス」です。温めながら導入すると一時的に毛穴が広がり、美容有効成分がより浸透しやすくなります。また冷却しながら導入すると、血管が収縮し浸透した成分が肌に長時間とどまります。冷却しながらの導入は、他の施術後の炎症の鎮静にも効果的です。このように、ケアシスでは、悩みに合わせて効率的にアプローチすることが可能です。

ところで、美容成分を肌の深い部分に届ける方法としては「イオン導入」も人気のある施術です。では、イオン導入はどのような施術なのでしょうか。

イオン導入とは

イオン導入は、微弱な電流を流して水溶性の美容有効成分をイオン化し、肌の奥へ届ける施術です。私たちの肌の一番表面にある角質層は、異物などから皮膚を守るとともに、皮膚内部の水分などを出ていかないようにする「バリア機能」があります。また、角質層とその奥にある顆粒層(かりゅうそう)の間には「バリアゾーン」と呼ばれる電気の膜があり、肌を保護する役割を果たしています。このような仕組みは肌を外部の刺激から守ったり、水分や体液を保持する上では重要なものですが、普段のスキンケアで美容成分などを肌の奥へ浸透させる妨げにもなっています。そこでイオン導入を行うと、電気の力でイオン化された成分を肌のより奥へと浸透させることができるようになります。

ケアシスとイオン導入の違い

ケアシスもイオン導入も美容成分を肌の奥へと効果的に届ける点では同じですが、次のような違いがあります。

・肌への浸透力
イオン導入は、手やコットンでつける場合よりも美容成分の浸透率が数十倍〜100倍高いと言われています。そんなイオン導入よりもさらに高い浸透力を誇るのがケアシスです。その浸透力はイオン導入の20倍とも言われています。

・導入できる成分
ケアシスは基本的にどんな成分でも浸透させることができますが、イオン導入は、ヒアルロン酸などの分子が大きい成分や極性によって向く成分と向かない成分があります。

ケアシスとイオン導入で使用する薬剤とその効果

どちらの施術も、使用する薬剤は複数あります。それぞれ当院で取り扱っている代表的なものをご紹介します。

〇ケアシスの場合

・ペップビュー
特に高い効果を期待できる神経幹細胞から抽出された高機能ペプチド美容液です。ペップビューには、抗酸化の働きを持つ「イデべノン」やハリを促す「アルジルリン」、美白を促す「アルブチン」、しわや傷の治癒に働きかける「グロスファクター(成長因子)」などが含まれています。ケアシスは肌への刺激がほとんどないため、ペップビューをこまめに導入すると、透明感とハリのある肌への近道となります。

〇イオン導入

・APPSビタミンC
APPS(パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム)は「両親媒性」といって水にも油にもなじむ新型のビタミンC誘導体です。美白、ニキビ予防、皮脂コントロール、毛穴トラブルの改善などに有効です。

・プラセンタAPPSビタミンC
APPSビタミンCにプラセンタを追加したもので、より高い美肌・保湿効果が期待できます。

・トラネキサム酸APPSビタミンC
APPSビタミンCに、肝斑に効果を発揮するトラネキサム酸を加えたものです。

・グリシルグリシンAPPSビタミンC
APPSビタミンCに毛穴の開き改善の効果が高いグリシルグリシンを追加したものです。

ケアシスとイオン導入:施術の流れ

ケアシスとイオン導入は、どちらも同じような流れで施術を行います。

(1)クレンジング・洗顔
化粧や皮脂の汚れを洗い流します。

(2)施術
〇ケアシス
所要時間は10~15分程度です。はじめに腕に対極盤を貼り、美容有効成分配合美容液を塗布して、プローブをあて、顔全体に滑らせていきます。

〇イオン導入
導入する薬剤によって異なりますが、所要時間は10〜20分程度です。美容成分を配合したジェルを塗布し、通電させるために肌に濡れたガーゼを密着させ、乾燥しないようにさらに上からラップをします。電気を逃す役割をする棒を手に持った状態で、微弱な電流を流していきます。

(3)施術後
どちらも日常生活への制限はありません。通常のスキンケアやメイクをして帰宅することが可能です。ごく稀ですが、いずれも施術後に肌が赤くなったり、一時的にかぶれの症状が出る可能性があります。

注意点として、皮膚にトラブルがある人やペースメーカーを使用している人、妊娠中の人などは施術ができない場合があります。事前のカウンセリングで必ず確認しておきましょう。

ケアシスとイオン導入の違いを知って自分に合った納得できる方法を選ぼう

ケアシスとイオン導入はどちらも美容有効成分を肌の奥深くまで届けることができる施術ですが、その仕組みや効果には違いがあります。また使用する薬剤によって得られる効果が変わってくるため、より美しい肌を目指したい場合は、それぞれの違いを理解した上で納得できる方法を選ぶことが大切です。

まとめ

  • ケアシスは神経幹細胞から抽出された高機能ペプチド美容液を導入することができる施術である
  • エレクトロポレーション技術によって角質細胞の細胞膜に電気的な穴を開けた状態にするため、薬剤を肌の奥まで導入することが可能
  • イオン導入は微弱な電流を流し、美容有効成分をイオン化して、肌の奥へ届ける施術である
  • イオン導入では、分子の大きいヒアルロン酸や極性によって向く成分と向かない成分がある
  • ケアシスによる浸透力はイオン導入の20倍とも言われており、より高い効果を期待できる
  • ケアシス、イオン導入ともに、使用する薬剤によってその効果は変わってくる
  • いずれも施術の所要時間は10〜20分程度で、スキンケアやメイク、日常生活への制限はない
  • 他の施術も併用するなど、美容治療には様々な選択肢があるため、詳しい説明を聞き納得できる方法を選ぶことが大切