頭皮ニキビはどうしてできる?皮膚科での治療方法とニキビを防ぐ対策をご紹介

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

シャンプー中やヘアブラシで髪をとかす際に、頭皮ニキビに当たって痛みを感じたことはありませんか。髪で隠れて気づきにくい頭皮ニキビは、いつの間にか悪化してしまうこともあります。頭皮ニキビの原因や治療方法、対策についてお伝えします。

頭皮ニキビとは

一般的にニキビは、鼻や頬、口周りなど顔にできるものと思われがちですが、実は頭皮にもできます。そもそもニキビは、毛穴に皮脂が溜まって、皮膚が小さく隆起することで生じる発疹を意味し、顔以外にも、頭皮や胸、背中など全身にできる可能性があります。正式には「ざ瘡(ざそう)」と呼ばれる皮膚の病気で、思春期にできるものは「ニキビ」、大人になってからできると「吹き出物」と言われることもありますが、どちらも同じものです。
ニキビは軽いものであればすぐに治りますが、悪化すると炎症を起こしてニキビ痕が残ったり、様々なトラブルを引き起こしたりします。また、頭皮ニキビは頭皮の痒みや痛みの原因となったり、脱毛症につながってしまうケースもあります。そうならないように、頭皮ニキビができてしまった時は正しく対処することが肝心です。

頭皮ニキビの原因

頭皮にニキビができる直接的な要因としてあげられるのは、顔や身体にできるニキビと同じく、毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖です。さらに、頭皮ニキビの場合はシャンプーのすすぎ残しや間違ったケアも原因になります。それぞれについて具体的にご説明していきましょう。

〇毛穴の詰まり

毛穴の詰まりに大きく関わるのは、ターンオーバーの乱れです。私たちの肌は新陳代謝によって、約1ヶ月かけて古い角質層から新しい皮膚へと入れ替わっています。その仕組みを「ターンオーバー」と呼びます。健康な肌はターンオーバーがスムーズに行われますが、不規則な生活習慣や加齢などによって、ターンオーバーは簡単に乱れてしまいます。すると、古い角質が残って蓄積しそれが毛穴の出口を塞いでしまうため、皮脂が詰まりやすくなります。

〇皮脂の過剰分泌

思春期は特に「アンドロゲン」という男性ホルモンが増加するため、皮脂の分泌量が過剰になりやすく、ニキビの発生に大きな影響を与えます。また大人になってからは、糖分や油分の摂りすぎなど食事の内容が偏っていると、皮脂の分泌量が増えて頭皮ニキビができる原因となります。

〇アクネ菌の増殖

皮脂を栄養源とする「アクネ菌」が増殖すると、炎症が起こります。炎症を起こしたニキビが悪化すると腫れたり膿が出たりして、痕が残りやすくなります。

〇シャンプーのすすぎ残しや洗いすぎ

ご紹介した上の3つはあらゆるニキビの共通原因ですが、頭皮ニキビにおいては、シャンプーのすすぎ残しも大きな原因になり得ます。というのも、シャンプーの成分や皮脂が毛穴に詰まるとアクネ菌の栄養源となってしまうからです。また、皮脂を取り除こうとして洗いすぎることも、洗髪時の刺激で炎症が起こったり、潤いをキープするために必要な皮脂が失われてしまう原因になり、ニキビの発生に影響を与えます。このようにシャンプーの方法は、頭皮ニキビの発生を左右する重要なポイントと言えます。

頭皮ニキビの予防・改善方法

頭皮ニキビを予防するためには、まずはニキビができる要因を減らしていく必要があります。特に次の点に気をつけてみましょう。

〇生活習慣の改善

生活習慣の乱れは、ターンオーバーのサイクルが崩れる原因に直結します。日頃から十分な睡眠時間を確保する、バランスの良い食事を摂る、ストレスを溜めすぎない、といったことは、頭皮ニキビの予防と改善には欠かせません。

〇洗髪方法の見直し

何気なく行っている洗髪の方法を見直すこともポイントです。シャンプーは肌に合うものを選び、しっかり泡立ててから、頭皮をやさしくマッサージするように行いましょう。すすぎはしっかりする必要がありますが、洗いすぎや皮脂の落としすぎには要注意です。また、髪を洗った後、すぐに乾かさずに濡れたままでいると、頭皮のトラブルが起こりやすくなります。洗髪後はドライヤーでしっかり乾かすようにしましょう。

こうした予防法を行っていても頭皮ニキビができてしまった場合には、むやみに触らないことが基本です。ヘアブラシで強く髪をとかすと皮膚に傷がついてしまいますし、自分でニキビを潰したりすると炎症が広がって悪化する可能性があるためです。また、帽子やヘルメットなどを長時間かぶっていると、蒸れて細菌が繁殖しやすい状態になるため、通気性を良くすることもポイントです。その他、枕カバーや寝具を清潔な状態に保つことも心がけましょう。

頭皮トラブルの原因はニキビ以外にも

ここまで頭皮ニキビについてお伝えしてきましたが、あわせて覚えておきたいのが、ニキビ以外にも起こり得る頭皮トラブルがある、という点です。頭皮にポツポツとした湿疹ができたり、ガサガサして痒みを伴ったりする場合は、ニキビではなく、別の病気が原因となっている可能性があります。
たとえば、汗やカラーリング剤によるかぶれ、シャンプーのしすぎ、空気の乾燥などによって「頭皮湿疹」ができると、痒みが出たりフケが目立つことがあります。また、「マラセチア」というカビの一種が原因と考えられている「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」も頭皮トラブルの一つで、皮脂の分泌が盛んな頭皮や顔面などに赤みが生じます。
いずれも対策としては、シャンプーの方法を見直したり、頭皮の清潔を保ったりすることが基本です。ところが、頭皮トラブルの原因や正しい対処法がわからず、よかれと思って誤ったケアを続けてしまった結果、症状が悪化してしまうケースもあります。そうならないためには、早めに皮膚科を受診して、正しい原因や対処法を知ることが重要です。

頭皮ニキビの治療方法

頭皮ニキビ専用の治療薬は薬局でも購入できますが、ニキビと思っていたものが別の病気の可能性もあります。誤ったケアをしないためにも、まずは皮膚科を受診しましょう。
医療機関での治療法は、抗生剤の飲み薬や塗り薬が基本になります。軟膏タイプの塗り薬は、頭髪のある頭皮には使用しづらいため、ローションタイプのものが処方されることが一般的です。ちなみに、顔などのニキビ治療で行われるピーリングやレーザー治療は、頭皮ニキビには向かないため、行われません。
個人差がありますが、頭皮ニキビの症状が軽ければ、薬を使用して1〜2週間で改善します。ただし、一度治ったように見えても、自己判断で薬を中止すると再び症状が出てしまうこともあるので、医師の指示に従いましょう。また、頭皮ニキビの根本的な要因を改善しなければ、症状を繰り返す可能性が高くなります。治療とあわせて、頭皮ケアの方法や生活習慣を見直しましょう。

まとめ

  • ニキビは「ざ瘡」と呼ばれる皮膚の病気で、顔や身体だけでなく頭皮にもできる
  • 頭皮ニキビは頭皮の痒みや痛みの原因となったり、脱毛症につながってしまうケースもある
  • 頭皮ニキビができる原因には、毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖、シャンプーのすすぎ残しや髪の洗いすぎが関わっている
  • 頭皮ニキビを予防するには、生活習慣や洗髪方法の見直しが重要
  • 頭皮ニキビの治療は抗生剤の飲み薬やローションタイプの塗り薬が基本となる