医療コラム
口周りや顎のUゾーンに赤み・ニキビといった肌荒れをしやすいのはなぜ?治療法も解説
口周りや顎などに頻繁に赤みが出たりニキビができたりしていませんか?繰り返しできてしまうため、「またか・・・」と半分諦めモードの人がいるかもしれません。では、口周りや顎はどうして肌荒れしやすいのでしょうか。今回はその理由と治療法について解説します。
口周りや顎が肌荒れしやすい理由と対策
「Uゾーン」とも呼ばれる口周りや顎は、一般的に肌荒れしやすい場所として知られています。その原因にはUゾーンの皮膚構造が関係しています。ヒトの皮膚には皮脂腺と汗腺があります。その名前からわかるように、皮脂腺は皮脂を分泌し、汗腺は汗を分泌しています。皮脂腺や汗腺は身体の様々な場所にありますが、その数は部位によって異なります。身体の中でも今回取り上げる口周りや顎は、汗腺は少なく、皮脂腺は多い部位。つまり、汗が少なく乾燥しやすい一方で、皮脂量は多くなりやすい場所、ということです。皮脂量が増えると毛穴詰まりを起こしやすく、ニキビができるなど肌荒れの原因になります。
このように、Uゾーンはそもそも肌荒れが起きやすい条件が整っているのですが、さらに次のような要因が加わると、ニキビなどができるリスクが増加します。
〇ホルモンバランスの変化
月経前に口周りや顎にニキビができる人が多くいますが、これには女性ホルモンの「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が関係しています。プロゲステロンには皮脂量を増加させる働きがあるため、毛穴詰まりを起こしてニキビなどの肌荒れを引き起こします。
ホルモンバランスによる肌荒れを完全に防ぐことは難しいのですが、油っぽいものを避けたり、スキンケア方法を変えたりするなど、月経前にはいつも以上に身体や肌の変化に合わせた生活を心がけることが大切です。
〇ストレスや疲れ
ストレスや疲れが溜まった時に口周りや顎が肌荒れしてしまう、という人は多いでしょう。その原因として考えられるのが、男性ホルモンの「アンドロゲン」です。アンドロゲンは女性にも分泌される男性ホルモンで、皮脂量を増加させたり、皮膚表面の角質を必要以上に厚くする働き(角化異常)があります。アンドロゲンは、ストレスや疲労などが溜まると分泌量が増加します。その影響で口周りや顎の皮脂量が増えそれが毛穴に詰まると、ニキビなどの肌荒れを引き起こします。
ストレスや疲れが溜まるとニキビができやすい人は、普段から休息をしっかりとるように心がけたり、自分なりのストレス発散法を見つけましょう。
〇手で触れることなどによる雑菌の侵入
口の周りや顎はついつい触ってしまいがちな場所。特にニキビなどができていると、気になって頻繁に触れてしまう人がいるかもしれません。肌荒れを起こしている場所を触ると手についた雑菌などが入ってしまい、さらに症状を悪化させる原因にもなるため、注意しましょう。
〇マスクの擦れなど
マスクをすることで、口周りや顎の皮膚には摩擦刺激が加わります。この刺激によって肌を守るバリア機能が低下すると、少しの刺激にも敏感になり肌に赤みが出てしまうことがあります。また水分が過剰に蒸発して乾燥しやすくなります。乾燥した肌を守ろうと皮脂量が過剰に分泌され、それが毛穴に詰まってしまうと、ニキビなどの原因になります。
さらに、マスク内は湿度が高く、ニキビの原因菌でもある「アクネ菌」などが繁殖しやすい環境下にあります。そのこともニキビを悪化させる要因の一つと考えられます。
清潔なマスクを使い、外した後は保湿ケアを取り入れましょう。
〇肌に合わない化粧品やシャンプー、ヘアケア剤による影響
肌に合わない化粧品を使っていると肌荒れが起こることがあります。特に油分の多い化粧品を、もともと皮脂量の多いUゾーンに使ってしまうと、毛穴詰まりなどの原因になることもあるため注意しましょう。また意外と盲点なのがシャンプーをはじめとするヘアケア剤です。髪の触れるフェイスラインだけに肌荒れが起きてしまう人は、ヘアケア剤を見直してみましょう。
〇シェービングの影響
かみそりなどで顔のシェービングを行うと、肌は一時的に乾燥した状態になります。そのため、お手入れの後は保湿ケアをすることが欠かせませんが、何もせずにそのままにしておくと、乾燥から肌を守るために皮脂が多く分泌され、肌荒れの原因になることがあります。
シェービングは肌の状態が良い時に行い、クリームなどを塗って肌を保護しながらお手入れをしましょう。また、シェービング後は必ず保湿しましょう。
〇紫外線
シミの原因として知られる紫外線ですが、実はそれだけではありません。皮脂を酸化させたり角化異常を起こす働きがあり、ニキビなどの肌荒れを悪化させる要因にもなります。帽子などをかぶったりするだけでは、顎やフェイスラインまではカバーできないため、一年を通して日焼け止めクリームなどを塗ることが重要です。
顎や口周りの肌荒れを悪化させないためには、ご紹介した要因をできるだけ取り除くことが必要です。また、睡眠不足や栄養バランスの偏った食事なども肌荒れを悪化させる要因になります。生活習慣とスキンケア方法を見直して肌環境を整えましょう。
繰り返すUゾーンの肌荒れは皮膚科で相談しよう
ホルモンの影響を受けやすいUゾーンの肌荒れは、生活習慣やスキンケアを見直しただけでは解決しないこともあります。何度も肌荒れを繰り返していると、炎症による色素沈着が起きて、長期間ニキビ痕が残ってしまう可能性があるため、皮膚科で相談することも検討しましょう。また、ニキビだと思っていたものが他の皮膚疾患だった、ということもあり得ます。たとえば口唇ヘルペスや口囲皮膚炎などは口周りに症状が出るため、ニキビや単なる肌荒れと間違われてしまうことがあります。間違った対処法が原因で皮膚症状が長引いている可能性もあるため、肌荒れを繰り返して困っている人は、皮膚科で相談することをおすすめします。
Uゾーンのニキビや肌荒れ、皮膚科での治療法は?
皮膚科におけるニキビ治療として一般的な方法は、薬物療法です。抗生物質やビタミンB群の内服薬が処方されたり、外用薬が出されます。こうした治療法は保険適用内の治療法であるため、「できてしまったニキビをまずはどうにかしたい」という人は、気軽に皮膚科に相談してみましょう。さらに、「もっと根本的な治療をしたい」という場合は保険適用外にはなりますが、次のような治療法が有効です。
・ディープエレクトロクレンジング、スキンスクライバー
ニキビができやすい人は、毛穴の汚れが取り切れていない可能性があります。ディープエレクトロクレンジングは電流を使って毛穴内に残る汚れを吸着し取り除く施術で、ニキビ予防にも効果を発揮します。また、スキンスクライバーは超音波の力で毛穴の汚れを取る取り除く方法で、同じようにニキビの予防に効果的です。
・ケミカルピーリング
ニキビや毛穴の詰まりに効果を発揮する治療法として、サリチル酸を使ったケミカルピーリングがあります。肌にサリチル酸を含む薬剤を塗って古い角質を取り除き、肌の新陳代謝を促します。肌表面に溜まった古い角質が除去され、ニキビ予防に効果を発揮します。
・イオン導入、ケアシス
イオン導入は、電流を使ってビタミンCなどの美容成分を肌に浸透させる方法です。ビタミンCは皮脂の過剰分泌を抑える作用があるため、ニキビ予防にも有効です。またケアシスは「電気穿孔法」と言って電流を使って肌にごく小さな穴を開けることで美容液をより深くまで浸透させる方法で、イオン導入の20倍もの浸透力があります。ケアシス専用のグロスファクター入りの美容液を導入することで肌の再生能力を引き上げ、肌荒れの改善やニキビ痕などの色素沈着に効果的です。
・LEDヒーライト
医療用のLEDを照射する方法です。ニキビ菌を殺菌したり血行を改善するなど、ニキビの改善や予防に効果を発揮する治療法ですが、光を浴びるだけで痛みを伴わないため、リラックスして受けることができます。
今回は皮膚科で受けられる治療法の一部をご紹介しましたが、他にもダーマペン4やウーバーピールなど肌質を改善したりニキビ痕を目立たなくしたりする治療法もあります。また、抗炎症作用や皮脂分泌を抑える成分の配合されたドクターズコスメもホームケアとしておすすめです。
患者様の希望や肌の状態によって適する治療法は異なるため、繰り返す肌荒れに悩んでいる人は皮膚科で相談してみてください。
まとめ
- Uゾーンは汗腺が少なく皮脂腺が多いため、皮脂量が多くなりやすく、毛穴の詰まりやニキビ、肌荒れを生じやすい
- ホルモンバランスの変化やストレスにより分泌される男性ホルモンのアンドロゲンが皮脂量を増加させ、肌荒れのリスクを高める
- 手で触れることやマスクの摩擦、化粧品の影響、シェービング、紫外線など、外部からの刺激が肌荒れを引き起こすこともある
- 皮膚科での治療法には薬物療法など保険適用内のものと、ディープエレクトロクレンジング、ケミカルピーリング、イオン導入、LEDヒーライトなど、保険適用外の治療法がある