美容業界で話題の「ビニール肌」とはどういう状態?見分け方や原因、治し方について解説。

執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)

最近、美容雑誌やネット記事などで話題にのぼっている「ビニール肌」。どういう状態の肌なのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。そこでビニール肌について解説します。原因や改善方法、ツヤ肌との見分け方についても詳しくご説明します。

「ビニール肌」とはどういう状態?

ビニール肌は医療用語ではなく、おもに美容業界で使われている言葉です。薄いビニールをまとったようにツルツルとしている肌のことを指します。「ツルツル肌」と聞くと美肌のように思えますが、ビニール肌はあまり好ましい肌の状態ではありません。というのも、ビニール肌は肌表面の角層が薄くなってキメがなくなってしまった状態だからです。
肌の美しさは様々な要因によって決まりますが、角層の状態はとても重要な要素です。角層は肌の一番外側にある層で、角層細胞と細胞間脂質(セラミドやコレステロールなど)で構成されています。わずか0.02mmという薄さながら、角層は水分保持機能と、外部の刺激から肌を守るバリア機能という重要な2つの役割を持っています。水分保持機能やバリア機能が低下すると、乾燥しやすく外部の刺激に対して敏感になるため、様々な肌トラブルが起こりやすくなります。つまり、角層が極端に薄くなっているビニール肌は、肌トラブルのリスクが高く、美肌とは言い難い状態ということです。

良かれと思っていたケアが悪影響?ビニール肌の原因

角層が薄くなってしまうビニール肌の原因として考えられるのが、スキンケアです。スキンケアの目的は汚れや古い角質など肌にとって不要なものを取り除きつつ、失われがちな水分や油分を補給して肌が本来の機能を果たせるようにサポートすることです。しかし、汚れや古い角質を取り除こうとするあまり、間違ったスキンケアをしてしまうと、ビニール肌になってしまうことがあります。具体的には次のようなケアに注意が必要です。

  • 過剰な角質ケア、ピーリング
    昨今、角質ケアやピーリングのできるアイテムがかなり増えていて、日常的に取り入れている人も少なくないでしょう。しかし、角質ケアをやりすぎてしまうと、必要な角質まで取り除いてしまい角層が薄くなってしまうことがあります。毎日のように角質ケアや角栓ケア、ピーリングをしている、角質剥離作用の強い化粧品をいくつも使っているという人は、頻度やアイテム数を減らすなど、見直しが必要かもしれません。
  • 洗顔やクレンジングのしすぎ
    皮脂の多い人や毛穴の汚れが気になる人は、力を入れて洗顔やクレンジングをしてしまいがちです。また洗浄力の高いアイテムやスクラブ入りの洗顔料をつい選んでしまっているかもしれません。摩擦をかけるケアや洗浄力の高いアイテムを使うケアを続けていると、必要な角質までなくなってしまい、ビニール肌になってしまうことがあります。
  • 肌に合っていないレチノール製品によるケア
    ターンオーバー(肌の新陳代謝)を促す成分として、注目を集めているレチノール。ターンオーバーが促されることで古い角質が除去されるため、透明感のある肌を目指したい人などに人気です。ただし、選び方には注意が必要です。レチノールは安全性が確認されている成分ですが、海外製の製品には濃度の高いものがあります。肌に合っていない高濃度のレチノール製品を使い続けていると、必要な角質まで除去されてしまい、ビニール肌になってしまうことがあるため注意しましょう。なお、レチノールは使い始めた直後に皮剥けや赤みといった症状(A反応)が出やすくなりますが、肌が慣れていくと治まっていくもので、ビニール肌とは異なるものです。使用後に現れた症状がなかなか治まらない人や、ビニール肌との見分けがつかない人は皮膚科に相談しましょう。

ツヤ肌とビニール肌の見分け方

一見、ツルツルとしたキレイな肌に見えるビニール肌。ツルツル、ツヤツヤとした見た目のため、ビニール肌と自覚していない人も少なくありません。そこで、健康的なツヤ肌とビニール肌の見分け方をご紹介します。

〇健康的なツヤ肌

  • 肌の皮脂量と水分量のバランスが良く、キメが整っている
  • 水分があってふっくらとしていて、肌に透明感がある
  • 肌トラブルが起きにくい

〇美白効果

  • 見た目はツヤツヤしているが、キメが整っていない
  • 皮脂が少ないのに肌がテカテカしている
  • 乾燥、痒み、赤み、ニキビなど肌トラブルが起きやすい
  • 洗顔やスキンケアの際に刺激を感じやすい

ツヤ肌は角層の水分保持機能やバリア機能がしっかり働いているため、見た目が美しいだけでなく、肌トラブルが起きにくいのが特徴です。これに対してビニール肌は、様々な肌トラブルが起きやすい状態です。「見た目はツヤツヤしているけど、肌トラブルが多いな」という人は、ビニール肌の可能性があるため要注意です。

ビニール肌の予防・対策

ビニール肌の予防や対策として、普段のお手入れを見直すことが重要です。次の点を注意してみてください。

  • 角質ケアやピーリングを見直す:頻繁にしている人は回数を減らし、専用のアイテムを併用している人は使い方を見直しましょう。
  • 洗顔やクレンジングによる負担を減らす:洗顔やクレンジングはやさしく行い、摩擦による負担を抑えましょう。
  • 保湿ケアをしっかり行う:保湿ケアが不十分なことでも、皮脂の過剰分泌や毛穴詰まりは起こります。毛穴トラブルが気になる時は頻繁に角質ケアをしたくなりますが、十分な保湿ケアも心がけましょう。またすでにビニール肌の状態になっている場合も、角層の水分保持機能が低下しているため、保湿ケアはとても重要です。
  • 紫外線対策を徹底する:角層が薄くなっていると紫外線のダメージを受けやすくなります。紫外線対策を徹底しましょう。
  • 肌に合った化粧品を使う:高濃度のレチノール製品を含め、肌に合ったものを使っているかどうか、改めて見直してみましょう。

ビニール肌によるトラブルが気になる時は皮膚科へ相談を

スキンケアを見直しても肌トラブルの起きやすい状態が続いている場合には、皮膚科に相談しましょう。肌の状態を見ながら、必要な治療を提案してもらうことができます。たとえば角層のバリア機能が低下して肌の保水力が落ちてしまっている場合には、イオン導入やエレクトロポレーションなどが改善策の一つになります。イオン導入は、イオン導入器によって美容成分を肌の奥に届ける施術です。またエレクトロポレーションは、短い波長の電流を流して皮膚の細胞膜に小さな孔を一時的に開け、美容成分を肌のさらに奥にまで浸透させる施術です。いずれも潤いのある肌を取り戻したい人におすすめです。
その他、医療機関ではケミカルピーリングなどの角質に対する施術もあります。自己流の角質ケアでビニール肌になってしまった人は、皮膚科医に相談しながら適切な角質ケアをすることも検討してみるとよいでしょう。

まとめ

  • ビニール肌は美容業界で使われる言葉で、角層が薄くなりキメがなくなった状態の肌を指すものである
  • ビニール肌の原因は過剰な角質ケアやピーリング、間違った洗顔やクレンジング、肌に合わない高濃度のレチノール製品の使用などである
  • 健康的なツヤ肌とビニール肌の見分け方は、ツヤ肌はキメが整い水分保持機能が高いが、ビニール肌はキメがなく乾燥や肌トラブルが多いことである
  • ビニール肌の予防や対策として、角質ケアや洗顔の見直し、十分な保湿ケア、紫外線対策、肌に合った化粧品の使用が重要
  • ビニール肌のトラブルが続く場合は皮膚科に相談すること