ニキビ痕の色素沈着は治る?改善に要する期間や治療方法など解説

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

代表的な肌トラブルの一つであるニキビ。炎症が落ち着いた後も、肌に色素沈着が残ったり、でこぼこしたニキビ痕が残るなど、悩みはつきません。そもそもニキビ痕の色素沈着は治るものなのでしょうか。キレイな肌に戻るまでの期間や治療方法などについて解説します。

ニキビやニキビ痕ができるのはなぜ?

ニキビ痕について知るためには、その原因となるニキビについて正しく理解しておくことが必要です。ニキビが発症する原因は様々ですが、直接的な要因としては、大きく次の3つが関わっています。

1.毛穴の閉塞(へいそく)

私たちの肌は日々、ターンオーバーと呼ばれるサイクルで新しい皮膚細胞に生まれ変わっていますが、そのサイクルが乱れると角質が分厚くなります。すると、毛穴から汗と共に排出される皮脂が詰まりやすくなります。

2.皮脂の過剰な分泌

食生活の乱れや睡眠不足、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどによって、皮脂が過剰に分泌したりターンオーバーのサイクルが崩れたりすると、毛穴が詰まりやすくなります。

3.「アクネ菌」の増殖

ニキビの元となるアクネ菌は皮脂を栄養源にしており、過剰に増殖すると炎症が起こります。

また、初期段階のニキビは「白ニキビ」とも呼ばれ、毛穴に皮脂が詰まっただけの状態です。この段階で適切にケアをすれば、ニキビは悪化せず、ニキビ痕が残ることはあまりありません。ところが、そのままにしておくと、空気に触れる部分の皮脂が酸化して黒くなり「黒ニキビ」に、またニキビ菌が増殖して炎症が起こると「赤ニキビ」へと変化していきます。そして、更に膿が溜まるようになると「黄ニキビ」にまで進行してしまいます。赤ニキビや黄ニキビは、炎症が強く皮膚に様々なダメージを与えるため、治癒するまでに時間がかかり、その過程でなかなか消えないニキビ痕になってしまうためです。

ニキビ痕の種類

ひとくくりに「ニキビ痕」と言っても、その種類は様々です。肌が受けたダメージの程度によって、大きく次の3つに分けられます。

〇赤み

ニキビの炎症が落ち着いた後、肌は平らになりますが、多くの場合、赤みが残ります。炎症が痕になっているため、半年ほど続くこともあります。半年〜1年以上経過しても赤みが消えない場合は、ニキビのダメージによって肌の表面が薄くなり皮膚が赤く見えている可能性が考えられます。

〇色素沈着

ニキビ痕が茶色いシミとして残るのは、メラニンが関わっています。ニキビによる炎症が長引いた場合、紫外線から肌を守る仕組みと同じく、肌を守るためにメラニンが作られます。

〇凹凸(おうとつ)

ニキビによるダメージが皮膚の深い部分にある真皮まで達すると、その後均一に再生されなかったり、皮膚細胞が増殖しすぎたりして肌に凹凸(おうとつ)ができます。

このようなニキビ痕は、原因である炎症が重症であったり、長引いたりするほど治りにくくなります。また、ニキビ痕が気になるからと言って手で触ったり、誤ったケアをしたりすると、雑菌が繁殖してさらなるトラブルを招くことがあります。

ニキビ痕の改善に要する期間

ニキビ痕が改善するまでにかかる期間は、肌が受けたダメージやニキビ痕の状態によって異なります。
皮膚の一番外側にある「表皮(ひょうひ)」は、外側から「角質層(かくしつそう)」、「顆粒層(かりゅうそう)」、「有棘層(ゆうきょくそう)」、「基底層(きていそう)」の4層構造になっています。皮膚細胞はターンオーバーによって日々生まれ変わっており、基底層で作られた新しい細胞は約4週間かけて成長しながら角質層まで押し上げられます。そして、その後、一番外側から垢や古い角質として剥がれていきます。
このような仕組みがあるため、ニキビ痕の色素沈着が表皮にとどまっていれば、およそ1ヶ月〜数ヶ月で徐々に薄くなっていきます。ただし、生活習慣やライフサイクルが関わってターンオーバーのサイクルはすぐに乱れてしまいます。その場合は、色素沈着が改善するまでに更に時間がかかってしまいます。
また、ニキビが重症化し、表皮より深い部分にある「真皮」にまでダメージが及んでいると、色素沈着が治るまでに数ヶ月〜数年かかることがあります。真皮のターンオーバーの周期は3〜5年とも言われており、年齢を重ねるとその期間は更に長くなるため、色素沈着が改善するには年単位の時間が必要になるでしょう。

ニキビ痕の色素沈着を改善するための治療方法

ニキビ痕による色素沈着を少しでも早く改善したい場合は、皮膚科での治療がおすすめです。セルフケアとしては、ターンオーバーを促すためにピーリングを取り入れるといった方法もありますが、効果が得られるまでには時間がかかり、逆に肌への負担となることも少なくありません。
皮膚科では、ニキビ痕の重症度や肌の状態を正しく診断した上で、様々な治療方法から自分に合うものを選ぶことが可能です。代表的な治療方法には次のようなものがあります。

〇ケミカルピーリング

サリチル酸を使用して、古い角質を剥がし新しい角質の再生を促す方法で、医療機関で取り扱える薬剤を用いるため高い効果を期待できます。4週間に1回程度の間隔で継続して行うと、より滑らかな肌に近づき、色素沈着も目立ちにくくなるでしょう。

〇レーザー治療

レーザーで極小の穴を無数に開けることで、新たな肌細胞を作ることを促したり、赤い色素に反応させ、赤みを改善する方法です。赤みやかさぶたができたり、内出血が生じるといったダウンタイムは伴いますが、凹凸のあるニキビ痕やニキビ痕の赤みの改善にも期待できるでしょう。

〇イオン導入・ケアシス

電流を用いて、ビタミンCや様々な美容有効成分を肌の奥の真皮層にまで浸透させる方法です。肌への刺激を抑えて、色素沈着の改善を目指すことができ、ケミカルピーリングなどを併用するとより高い効果が期待できます。

〇LED治療

医療用LEDを用いて表皮から皮下組織までのエイジングケアができるもので、コラーゲンなどの細胞の再構築が促されるためニキビやニキビ痕の改善に適しています。リラクゼーション効果もある治療法で、肌のツヤアップにも効果的です。

〇ダーマペン・ウーバーピール

微細な針がついた機器で、皮膚の真皮層に目に見えないくらいの小さな穴を開け、肌の自然治癒力を利用して皮膚再生を図り、ニキビ痕や凹凸を改善する治療方法です。また、炎症しているニキビ、炎症後の色素沈着に対し、皮膚の表面にダーマペンで小さい穴を開け、その後専用のオールインワン型ピーリング剤を塗布するウーバーピールといった治療方法もあります。施術後、赤みやひりつき、内出血を伴うこともありますが、レーザー治療と比較しダウンタイムの負担が少ない方法と言えます。

このような治療法にはそれぞれメリットや注意点があり、費用や理想的な治療間隔も異なります。ニキビ痕の色素沈着に悩む人は、一度皮膚科で相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ニキビ痕の原因となるニキビは、毛穴の閉塞や皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖が関わって発症する
  • 初期段階の白ニキビをケアせずに放っておくと、黒ニキビ、赤ニキビ、黄ニキビへと悪化することがある
  • ニキビが悪化するほど皮膚のダメージが大きくなり、ニキビ痕が残る
  • ニキビ痕には、赤み、色素沈着、凹凸といった種類がある
  • ニキビ痕が改善するまでにかかる期間は、肌が受けたダメージやニキビ痕の状態によって異なる
  • ダメージが真皮まで及んでいると、色素沈着が治るまでに数年かかることもある
  • 誤ったセルフケアは肌の負担になりやすいため、色素沈着を改善するには皮膚科の治療がおすすめ
  • 色素沈着の治療には、ケミカルピーリングやレーザー、ダーマペンなど、様々な種類がある