ハイドロキノンとは?ハイドロキノンの効果と正しい使い方を解説

執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)

高い美白効果を持ち、「肌の漂白剤」と称されることもあるハイドロキノン。様々な美容製品に配合されていますが、実際はどのような効果を持つのでしょうか。効果を得るために知っておきたい正しい使い方も合わせて、具体的にお伝えしていきます。

ハイドロキノンとは

ハイドロキノンは、もともと天然にも存在する成分で、イチゴやコーヒー、紅茶、麦芽などにも含まれているものです。還元作用という働きを持つため写真の現像にも使われており、現像に携わっていた人の肌が白くなったことがきっかけで、美白作用が発見されたと言われています。
ハイドロキノンの美白効果は世界中で注目されていて、米国などでは20年以上前から美白剤として使用されています。日本で認可されたのは2002年で、皮膚科などの医療機関で美容治療に使用されている他、薬局やインターネットなどで購入できる市販の化粧品にも配合されるようになりました。ただし、ひと言でハイドロキノンと言っても、配合濃度によって得られる効果には大きな差があります。ハイドロキノンの効果を安全に得るためには、その作用や効果を正しく理解しておくことが必要です。
では、ハイドロキノンのどのような働きによって、美白効果が得られるのでしょうか。

ハイドロキノンの働き

シミの原因となるメラニン色素は、肌が紫外線を浴びた際にそのダメージから肌を守るために作り出されます。メラニン色素は、「メラノサイト」と呼ばれる細胞によって日々生成されていますが、通常はターンオーバー(肌の新陳代謝)によって排出されています。ところが、紫外線を浴びすぎたり、ターンオーバーのサイクルが乱れたりすると、過剰に蓄積されてシミの原因となってしまうのです。
このような仕組みで作られるシミですが、ハイドロキノンにはメラノサイトの働きを抑制し、メラニン色素の生成を阻害する効果が認められています。さらに、メラニン色素の生成に関わる「チロシナーゼ」という酵素の働きを抑制する作用があります。このような働きから、ハイドロキノンにはシミを予防したり、目立ちにくくする効果が期待されているのです。また、同様の働きによって、シミだけでなくニキビによる赤みや色素沈着を改善する効果も期待できます。

ハイドロキノンで改善を期待できるシミの種類

シミにはいくつもの種類がありますが、具体的に次のようなシミに対して、メラニン色素の生成を阻害するハイドロキノンが効果を発揮します。

〇「老人性色素斑」または「日光性色素斑」

紫外線が原因で特に30代頃から発症します。薄茶色〜茶色で、境界がはっきりしている点が特徴です。形状は円形や楕円形に近く、大きさは数mm〜数cmで、一つだけできることもありますが、一般的には複数のシミが発生します。

〇肝斑

妊娠中や更年期の女性に発生しやすいシミです。主に頬骨のあたりに左右対称のシミができるもので、原因には女性ホルモンの乱れも深く関わっていると考えられています。

〇炎症後色素沈着

傷ややけど、虫刺されの後などにできやすい「炎症後色素沈着」もハイドロキノンによって改善が期待できます。ニキビが悪化した時にできやすい色素沈着も、炎症後色素沈着に含まれます。

一方で、シミと思っていたものが、実は痣(あざ)の一種であったり、「老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)」と呼ばれる加齢によるいぼであったりすることも少なくありません。そのような場合はハイドロキノンではなく、液体窒素やレーザーを使った治療が適しています。また、そばかすも遺伝的な要因が大きいため、ハイドロキノンで十分な改善効果を期待することは難しいでしょう。

ハイドロキノンの正しい使い方と注意点

市販のハイドロキノンを購入し、セルフケアに取り入れる場合は、1日1回、夜の洗顔後に使用することが基本です。洗顔後、化粧水、乳液などで保湿を行なってからハイドロキノンを塗布しましょう。製品の使用方法によりますが、気になるシミをケアしたい場合は色素の部分のみピンポイントに塗布し、肌全体のトーンをあげたい場合は、全体に薄く塗布してから、乳液やクリームなど、普段のスキンケアを行います。伸びの悪い場合は、伸びやすいクリーム等と混ぜて使用します。
また、ハイドロキノンを使用する際は、以下の点に気をつけましょう。

〇紫外線対策を徹底する

ハイドロキノンを塗布した部分は、無防備に紫外線を浴びると、逆にシミが濃くなったり色素沈着を起こしたりする可能性があるため、朝の使用はおすすめできません。また、夜に使用する場合も、紫外線対策を徹底しましょう。

〇必要のない部分へは使用しない

気になる症状がない部分に長期間使用していると、紫外線を浴びて肌の色が部分的に白く抜ける、「白斑(はくはん)」が生じることがあります。必要のない部分に塗布しないようにしましょう。

〇副作用が出たら使用をやめる

ハイドロキノンを使用後、人によっては、肌が赤くなったり、かぶれる、といった副作用が出ることもあります。そのような症状が見られた場合は使用を中止しましょう。

〇効果が出ない場合には他の治療を検討する

ハイドロキノンの効果を実感するためには、数週間〜数ヶ月間は使用を継続する必要があります。ただし、長期間使用し続けると、白斑が生じるリスクも高まると考えられています。3ヶ月以上ハイドロキノンを使用しても変化がみられない際は、他の治療などを検討する方がよいでしょう。

ハイドロキノンの効果を高めるには

ハイドロキノンは高い美白効果を期待できるものですが、使用方法を誤ると、肌の悩みが悪化してしまう可能性もあります。またハイドロキノンの配合濃度は製品によって異なるため、市販のものでは期待している効果が得られないこともあります。ハイドロキノンの配合濃度は1〜10%程度のものが多くみられますが、濃度が高ければよいというものではなく、副作用のリスクも考えた上で肌に合うものを選ぶことが大切です。
より高い効果を安全に得たいと考える場合は、皮膚科を受診し、診察を受けた上で、医療機関で購入できるハイドロキノンを使用するとよいでしょう。
また、ハイドロキノンは単独でも効果を得られますが、浸透性があまり高くないので、レチノイン酸を併用すると美白効果をより期待できます。その他、ピーリング治療などの施術も並行して受けると、より浸透しやすくなり、ハイドロキノンの効果も高まるでしょう。

ハイドロキノンは、使用上の注意点を理解して活用を

お伝えしてきたように、ハイドロキノンは高い美白効果を期待できる一方で、使用方法を誤ると、肌の負担になってしまったり、シミが逆に濃くなる、肌が白抜けするなどのトラブルが生じる可能性があります。このようなトラブルを予防するためには、皮膚科で相談の上購入されることをおすすめします。使用上の注意点を理解した上で、美肌作りに役立てましょう。

まとめ

  • ハイドロキノンは天然にも存在する成分で還元作用を持つ
  • ハイドロキノンはメラニン色素の生成を阻害する働きがあるため、シミを予防したり改善する効果を期待できる
  • 色素沈着を改善する効果もあるため、ニキビ痕の治療などにも使われる
  • ハイドロキノンによって改善を期待できるシミは、老人性色素斑や肝斑、炎症後色素沈着などである
  • ハイドロキノンを塗布した部分は、紫外線を浴びると色素沈着を起こす可能性があるため、基本的に夜に使用し、紫外線対策を徹底する
  • 長期間使用し続けると白斑が生じるリスクが高まるため、効果がみられない場合は使用の中止を検討する
  • ハイドロキノン単独よりもレチノイン酸を併用すると、より美白効果が高まる
  • 皮膚科では、安全で効果的なハイドロキノンを購入することができる